レアモンクエスト 2023 第七話- 時計好きの話

先日、息子とケーキを買いに行ったとき、食べたいケーキを店員さんに伝える息子が、「あの、焼きソバみたいなん乗ってるの2つ」とモンブランを指さして言っている姿が、どことなく僕に似ていると感じたｵｻｰﾝです。

先月末、久しぶりの東京マラソン（前回参照）で、ロレックスの希望モデルに近いモデルを1本ゲットし、上機嫌で過ごしていたが、何気なくスケジュールアプリを開いて驚いた。

『12月〇日・兄貴お祝い』と書いてある。そうだった。東京へ行かなければならない日だった。ならば当然、前日から休みを取って東京マラソンをするのが俺流・・・しかしスッカリ忘れていた。新幹線のチケットを取ろうにも、指定席はもう予約が取れなくなっていた。まぁ、仕方ない。日帰りだし、ホテル代がいらない分、少々高くてもグリーン車で行けばいいか、と思い不本意ながらチケットを急遽手配した。

週末の朝なのに、新幹線のホームには人が多い。僕はただひたすら、眠い。マラソンができない東京なんて、徹子のいない『徹子の部屋』みたいなもんだ。よくわからないが自暴自棄になりつつ、新幹線に乗り込んだ。

新幹線の車窓から見えるお馴染みの “727” という謎の看板。なぜか一心不乱にシャッターを押し続けていると、いつの間にか東京に着いていた。東京駅では人がごった返しており、こんな状態ではマラソンできそうにないと、しみじみ感じ、そしてやっぱり諦めた…

土地勘がなくよくわからないが、待ち合わせは築地という。マラソンをするわけでもないのでタクシーに乗り込み、築地へ向かってもらう。

ちなみにこの日は、ドゥエラーのチョコさん。ドゥエラーを着ける時、面倒なので月を合わせることはない。

タクシーの車窓から、銀座が何となく近いことがわかった。銀座・・・ギンザ・・・GINZA・・・血が騒ぐ。いやいや、人がいっぱいだからもういいや・・・行かないよ・・・

はぁ～？東京に来てロレックスに寄らない？そんな人いるの？聞いたことも見たこともない。行くに決まってんっしょ！

「ヘイ、運ちゃん！銀座の四丁目まで飛ばしてくれや！」

若いドライバーはヒールアンドトゥのテクニックを見せつつ、タイヤを鳴らしながら急遽、銀ヨン（そういうかは知らない）まで向かってくれた。もちろん脳内BGMは、TMネットワークの “Get Wild” だ。

天気も最高。時間もないのでさっそく銀座三越に殴りこむ。実は前回のマラソンの時に、ちょっとお近づきになれた店員がいる。ここは彼女めがけて行くしかない。

店員：店　/　ｵｻｰﾝ：オ

店：「どうぞ、お伺いいたします。」

オ：「あの〇〇さんという店員さんおられますか？」

あとは前回の話も踏まえて欲しいモデルへと話を持って行けば・・・

店：「あいにく、本日お休みを頂いております。」

オ：「・・・」

いきなり出鼻をくじかれた。この店員さんと話をしても、このパターンでは出してもらえる可能性は限りなく低い。でも引き下がってはせっかく来た意味がない。

オ：「あっ、いや別に〇〇さんは前回お話させてもらったというだけなんで・・・」

どの店員さんとか別にこだわってないよ、という感じで手のひら返しを行う。

店：「そうですか。何かお探しですか？」

完全に事務的な感じの対応になってしまっている店員さん。

オ：「あっ、えぇ～っと、あっ、デイトナを少々・・・」

塩かコショウのようになぜか “少々” と言ってしまった。その後、在庫確認というルーティーンワークの後、今は在庫を切らせておりますの流れでフィニッシュした。それにしてもしょっぱなから動揺しすぎて、小林製薬のように「あっ！」をいっぱい言ってしまった。反省だ。

GINZA SIX は相性がよくないのでスルーしようかと思った。いつも列ができていて、結構待ち時間がかかることもあるし・・・と思っていたが、覗いてみると列もなくすんなりと入店できた。

今回僕が欲しいといったモデルはこれだった。

デイトジャスト41です。フルーテッドベゼル x ジュビリーブレスレットというこだわりがあった。もしくは、スムースベゼル x オイスターブレスレットでもいい。しかしフルーテッド x オイスター、もしくはスムース x ジュビリーは、なんか僕の中で気持ちが悪い。なんだかチグハグな感じがしてしまう。好みの問題なんだけど。

それを伝え、店内で待つ・・・待つ・・・待つ・・・・長い・・・・そういや、僕自身があまり覚えていなかったけど、この店員さんって僕が前に来た時も対応してくれたような・・・その時は一瞬の在庫確認でアウトだったけど、今回はヤケに長い。もしや…

しばらくすると、トコトコと戻ってきた。

手ぶらでじゃん！

やはり手ぶら。諦めムードで店員さんをふと見ると、手を伸ばしカタログを広げる。

「お色目ですが、これなら1本ご用意があるのですが・・・」

ホンマか？え？ホンマかいな～？

「み、み、見せてもらってもヨカッペ？」

急転直下の出来事に、使ったことのない東北弁が飛び出す。でも何でデイトジャストからこのモデルなんだ？ドゥエラーを着けてたからか、ドゥエラーを？

席に着き、僕の為に運ばれて来る時計 on the ベージュトレー。みんな大好きベージュトレー。勃起不可避のベージュトレー。興奮が止まらない。EDも治ると噂されている（当社比）。その興奮の中、試着からの会計まで終わらせた。