《マーケット》時計の相場が一気に崩れる時を考える

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今回のお話は、時計が好きで相場のことは気にしていない人にとっては「は?だから?」という内容ですが、自分の所有している時計を現在の相場と照らし合わせて、何となく金持ちになった気になっている人は知っておく必要があることです・・・が、普通に考えたらわかる当たり前の話です。

高級時計の相場が下がっているという話は最近の二次流通市場ではよく言われているのですが、冷静に考えて今の状況は相当危ういとも言えます。そもそも、時計を買い取ってそれを流通させる市場が現在では活性化していますが、そういったあきないを営んでいる方々もかなりその辺りは警戒しているはずなんです。

現在の人気モデルの相場をみてみます。

大人気モデルのロレックス コスモグラフデイトナの先代モデルである Ref. 116500LN の相場になりますが、2016年にリリースされて以来、一度も定価を割ることなく二次流通市場においては大きく貢献しているモデルと言えます。当然、高級時計という一般の人には高嶺の花だったものが投資(投機)の対象となっている側面はあるが、世界的なパンデミックなどの影響もあり、異常なまでの相場の上昇を引き起こしました。

ここでいう相場とはどのように形成されているのかを紐解いて考えてみたい。

株式投資などで言われる相場とは “気分” と言われることがある。「これ、ええんちゃう?」という “気分” が多くの人に広がる(共感)と、その物自体の相場が上がる。なぜなら、現在の価格が多くの人の持つ感覚よりも「割安」に感じるから「ええんちゃう?」となるわけだ。それは、企業が(CMなどを通じて)作り出したイメージや商品が万人に受け入れられた結果、その企業がこれから先も伸びる(成長する)であろうと期待や予想をして購入に至る。その人数が多いがゆえ、株価は上昇するといったのが本来あるべき株式市場だと私は思うし、理想である。現実は機関投資家などによる大口売買とか、・・・まぁ、それは置いておきます。

それを高級時計市場と比較すると、どうだろう?ロレックスは良い時計を作っている。多くの特許も持っている。でもロレックスじゃなくても機能面で優れていて価格も安い時計は数多くある。いや、安くて優れた機能を備えた時計の方が多いと言っても過言ではない。しかし実際はロレックスが時計市場で一人勝ち状態であり、それがブランドの持つ力なんだと思う。そう考えると、株式市場と同じように企業イメージで時計の相場が上昇するのも理解できる。仮にロレックスが年間100万本ほど製造していても、供給量が追い付いていないと正規店の店員さんはいう。しかし年間1万本も製造していない雲上ブランドでは、評価が高く入手は困難だけれども二次流通市場では定価割れをすることが往々にしてある。結局はブランドバリューが相場の要因の大半を占めているということだと思われる。

しかし株式でもそうだが、相場は注意する必要がある。ロレックスを始めとする高級時計相場は、日本国内に限った相場ではなく、世界規模のマーケットで形成されている相場であるということだ。「その方が健全だ」と言えるのだが、価格を考えたときに大きく崩れる要素があるということを念頭に置いておく必要がある。

例えるならば、下のようなショップでの価格です。

2023年11月現在で約470万円であり、状態によっては500万円を超える個体も多くあります。

ブラックでも約440万円となっており、400万円~450万円あたりの幅があるにせよ、そんな感じの相場である。

では、世界の相場と比較してみる。時計に関するECサイトでは世界最大規模のChrono24で見てみると、幅は当然あるが、こんな感じです。

日本の並行店の多くもこのChrono24に登録しており、ここでの販売を行っている。ということは、当然見ての通り、日本で販売されている価格との差というものは、基本的に「ない」と言ってもいい。購入後の消費税などを考慮する必要もあるが、おおむね相場は一致している。何が言いたいかというと、世界市場と日本の市場は基本的に同じ価格ということである。

少し見にくいが、下のグラフを見てみましょう。

これは2015年から現在までの 米ドル/円 の相場です。つい5年前までは 1ドル≒113円ほどだった。今では 1ドル≒150円になっている。その差は37円。この5年で約1.32倍に円相場で円安となっている。

仮に時計自体の相場は全く動いてなくても、米ドル/円 相場が動くだけでその余波が直撃することが容易にわかる。上記の相場で計算すると、3万ドル(約450万円)の価格だった時計が、アメリカでそのまま3万ドルで売られていても、5年前の113円のように円高になると、日本では約340万円になる。同じ3万ドルで売られているのにも関わらず、その差は110万円ほど日本では価格が下がる。国内の並行店は大きく打撃を受けるに違いない。

新型エクスプローラーI Ref. 224270 は、状態が良い個体で150万円ほどの相場となっているが、上記同様、5年前の 米ドル/円 相場に換算すると、約113~114万円となる。

2023年11月現在の国内定価が、1,002,100円です。正規店で購入できても二次流通市場で113万円なら買取価格では確実にマイナスとなる。ロレックスの相場が落ちなくても、為替相場の変動だけでここまで変わってくる。

実際には、こんなに数十円も一気に米ドルが暴落することは考えにくいが、単純に考えるとそういうことになる。額が大きくなればなるほど為替での差額が大きくなるのは言わずもがな。しかも、こうした為替相場の影響を受けて、実際のところ時計市場自体も上下する。概ね、米ドルが下がれば時計相場も下がると思われるので、為替相場以上の下落をすると思われる。

NY外為市場=ドル150円割れ、世界経済巡る懸念で
終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が下落した。週間では今年2番目となる大幅な下げを記録。一方、世界経済の見通し軟化を巡る懸念が高まる中、円高が進み、ドル/円は1ドル=150円を下回った。

現在は円安ということで、物価が上昇しているとはいえ日本国内で暮らしている分にはそれほど影響はないが、アメリカで外食しようものなら恐ろしいほどの金額と昨今、言われている。

McDonald’s revenue soars as it hikes menu prices: ‘ Big Macs’
Many consumers have said that fast food has already gotten so expensive, it’s no longer worth it.

ニューヨークではビッグマックセットが18ドルもするらしい。日本円にして約2,700円だ。そんな価格のマクドナルドの1人前のセットはさすがに日本では考えられない。しかし日本もアメリカのように給与水準も上がり、大きな物価上昇になれば、150万円のエクスプローラーIも半額とは行かないまでも感覚的に100万円以下に感じるようになる。定価がそのままなら大変ありがたいが、そうなれば定価も大きく上がると思われるので、やっぱり結果的に相場が崩れる可能性がある。

総合的に考えて、やはり今の相場は崩れる要素が大いにある。多くの人がそう思っているから、徐々に高級時計相場が下落している現状なのだろう。何をするにも、”身の丈に合った” 行動が大事なんでしょうね。

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