二次流通市場の厳しさを考えてみた

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時計関連のニュースを見ていると、ここ最近は二次流通市場の価格が下落しているとよく目にする。僕のような「何かいい時計はないかなぁ」と、買えないクセに探している者にとっては、そんなに相場が下がったという実感は正直ない。多分、見ているモデルが人気モデルということが原因の一つか。人気モデルは、それほど価格を下げなくても売れる。はたから見て、相場が下がっているとはいえ、さぞ並行店は儲かっているのではないかと思ってしまう。

約17~18年前のロレックスを特集した雑誌を見ると、当時でも世界的に見て激レアダイアルを持つヴィンテージモデルはオークションで数千万円の値を付けて落札されている。

当然、上に掲載したモデル達は今となれば手に入れることが不可能に近く、もしどこかのオークションで登場しても数億円という価格となっている。が、当時でも高い。

ではその当時のデイトナを例に価格を見ると、Ref. 116520 の定価が約80万円強。並行店での価格を見ると、120万円~150万円という感じになっている。当時の消費税が5%ということを考慮しても、買取価格はプレミアが数十万円付いていると思われる。しかしGMTマスターII Ref. 16710 の定価が約50万円強のこの時代、並行店での販売価格を見ると軒並み50万円を切っている。ベゼルのペプシやコーク、ブラックにそれほどの価格差もない。

このチャートは2018年からの5年間のロレックス全体の平均相場となるが、今から1年半前のピークが異常だったことが見て取れる。しかしこの相場と定価を連動して見る必要がある。約5年前のデイトナ Ref. 116500LN の定価が約130万円。現在の Ref. 126500LN の定価は約200万円。5年間で定価ベースで1.5倍以上に膨れ上がっている。それを考慮すると、今の相場が下がっているとはいえ、二次流通市場の価格は5年前の1.5倍程度のものではない。SSデイトナなんて400万円を超えているし、デイトジャストでさえプレミア価格。5年前なんて、定価割れしているのが当たり前のデイトジャストが、である。

2023年6月に、僕がこれまで時計を購入したことのある「NJ Time」という並行店がなくなった。また、一度も利用したことがなかったが「イルソーレ」という並行店も、何の前触れもなく一瞬にして消えてしまった。前者は、株式会社ネットジャパン という会社で、子会社が京王や東急という百貨店に今でもジュエリーショップを展開しているし、これまで売った時計のアフターサービスも一応受け付けているようだ。どちらかというと、このジュエリー系が本業か。しかし後者は恐らく倒産だと思われる(勝手な推測)。インスタグラムが残っているが、お店が消えた時期の投稿からの更新がなく、HPも消えている。下北沢や大阪に店舗を持ち、時計のオーバーホールまでやっていたお店なので、修理とかに出していた時計が持ち主に返されたのかが気になるが、それは今回の問題とは関係がないので触れない。これらのいわゆる並行店と呼ばれる店が閉店、倒産するのはなぜだろうか。それは、実際にロレックスなど人気ブランドの時計を買いたいと思っている僕たちに共通する部分があるような気がする。

時計ブームが来る前までは、デイトナマラソンなんぞ言葉はなかった。店員さんに、「僕、SSデイトナ、ほちい」と言えば、「じゃ、今度ね~」という感じで買えた。それが徐々にかよってナンボ、喋ってナンボになり、今では資産家や著名人が時計を趣味にし、人気モデルをかっさらっていく。悔しいが、こればっかりは世の流れなので仕方がない。なぜ仕方がないと言えるかというと、個人の趣味だからだ。自分の好きなモノが他の人も好きになり、その人がお金を持っているというだけの話なので、諦めがつく。

しかし並行店など、会社はどうか。彼らは従業員を雇い生活の糧としてのあきないをしている。倒産や閉店が一番怖い。しかしこうして実際に起こっている。

「相場が上がる=並行での価格が上昇」というイメージで僕たちは受け止める。しかしこれは川で例えるなら下流での出来事。この上昇した相場の商品は、その上流で上昇した買取り価格で入荷している。これは両刃の剣の要素がある。買取り後に相場が上昇し、当初の予定よりも高値を付けても売れたパターン。これは棚ぼた的要素だが、ここで調子に乗ってはいけない。上昇相場を見誤る場合がある。商品が予定価格よりも良い値でバンバン売れる。売れたら商品を急いで入荷したい。その時には買取相場も上昇している。資金のある業者は、他社よりも良い価格で買い取ってくれる。他の並行店も商品を集めるために、力のある業者の相場に肩を並べようとする。その時に、「まだまだ相場が上昇していて、商品さえ入荷すれば売れる」と判断した場合が怖い。上記のグラフの2022年4月以降の下落相場となった時、買取価格がその相場を下回ってしまう。まさに1年前辺りがそうだったんでしょう。

コロナ前よりも今の方が相場が高い。しかしコロナ禍の上昇相場で仕入れた商品の赤字が多くの店舗で起こっていたはず。そうなってしまうと、買取りに強気の価格を提示できなくなる。資金に余力のあるところは抜けた買取り価格で多くのいい商品を集める。こうなれば悪循環だ。結局資金繰りが悪化し、閉店や倒産せざるを得なくなる。正規店で人気モデルを買える者、豊富な資金で良個体を入荷できる並行店。これらはまさに、「ザ・資本主義」です。

よくよく考えてみると、最近の時計ブーム以前は多くの人が高級時計の購入先に並行店を選んでいた。それはロレックスでさえも例外ではなく、正規店で買う方が少なかった。並行店はその名の通り、海外から並行輸入された時計を売っていた。国内の正規店よりも安かった。それがいつしか、並行輸入品よりも国内からの買取り品がメインになった。同時に、個人がeマーケットプレイスを利用して出品することができる。しかもそのマーケットは国内だけに留まらず、世界中に向けて販売できる。並行店は、これまでの販売実績と二次流通市場内での規模、アフターサービスなどで購入者からの信用を盾に個人販売者と対峙する。この状況では、大手並行店数社の独占状態になってくる。

生き残りを賭けて企業努力をする傍ら、大手と張り合うがために偽物や改造された時計、並びに付属品をホンモノと偽って販売がされないよう、願うばかりです。

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