マニュファクチュールってなんだ?
「ここのブランドはマニュファクチュールなんで~」と、時計のことをいかにも知っている風にいうことありますよね。かく言う僕もその一人です。知識があるからってエライわけでもないし、それで偉そぶっているのも見ていて恥ずかしい。でも言うからには知っておきたい知識。ということで今回は高い時計の話題になるときによく使われる「マニュファクチュール」という言葉について知識をブッ込んでおきましょう。
中学で習う言葉
中学の時に歴史で習う言葉と思った方、真面目に勉強してましたね。マニュファクチュアとは、工場や工作場所で手工業や工業製品を製造することを指します。この用語は、製造工程が一貫して同じ場所で行われ、一つの企業や工場で製品の生産全体を管理する場合に使用されます。つまり、材料の調達から生産、組み立て、品質管理まで、すべての段階が同じ場所で行われることを意味します。「マニュファクチュア」という言葉を中学の歴史で習いましたが、最近では出てこないこともあるようです。その理由は下記の通りですが、どうでもいいのでスッ飛ばしてもらって結構です。
戦後の歴史観の中心であった「唯物史観(ゆいぶつしかん)」では、「産業革命」を経て近代社会に移行すると考えられており、「それでは日本の産業革命の萌芽はいつからか」ということが長く議論されてきました。その中で日本の工場制手工業がイギリスの「マニュファクチュア」にあたると考えられ、これにより日本がいち早く産業革命に成功したという考え方が有力でした。そのため、「工場制手工業(マニュファクチュア)」という表記を使用してきました。しかし、近年は「唯物史観」からの脱却が進められてきており、日本とイギリスを結びつけて考える必要性も薄れてきたことから、この用語が使われなくなりました。また、教科書では、イギリスの工場制手工業(マニュファクチュア)にはあまり触れる機会がないため、日本の工場制手工業の説明の際に、あえてその用語を使用する必要もないと考えております。高等学校の日本史・世界史教科書においても、イギリスの場合に限り「工場制手工業(マニュファクチュア)」とし、それ以外の工場制手工業は単に「工場制手工業」と表記することが一般的になっています。
時計界でいうマニュファクチュール
時計の世界でいうマニュファクチュールとは腕時計の設計からデザイン、パーツの製造、組み立てまで、全行程を一貫して自社でまかなえるブランドを指します・・・と言い切りたいのですが、完全な “正解” というのがない、というのが実態です。それはなぜかというと、それぞれがマニュファクチュールの定義を独自で解釈しているからです。
全てを一貫して自社で製造しているブランドは、パテック・フィリップやオーデマ・ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンといった世界三大時計ブランドや、ロレックスなどもその中に入ります。今ではオメガやブライトリングも全てもモデルではないにしろ、マチュファクチュールのモデルをラインナップしています。もちろん日本のセイコーやシチズン、オリエントなどもマニュファクチュールです。
しかし、ネジ一本でも自社で製造してるところもあれば、主要なパーツを自社で製造していればマニュファクチュールと呼んでいる場合もあります。ということで、その定義は様々というのが今の現状です。
マニュファクチュール反対の言葉は?
マニュファクチュール対して、ムーブメントを専門に作っている会社から仕入れ、それを自社のケースに収めて時計を作り上げるこの生産方法をエタブリスールといいます。中でもETA社というムーブメントを専門で作っていた会社は、多くのブランドにそのムーブメントを供給するメーカーで有名で、エボーシュメーカーと呼ばれています。しかしその大手エボーシュメーカーのETA社が世界最大の時計企業であるスウォッチグループ傘下に入ったため、スウォッチグループ内のブランドにしか供給しなくなるという出来事が大きく報道されました。下記参照ください。

メリット/デメリット
物事にはメリット/デメリットがあるものですが、当然このマニュファクチュールにも存在します。マニュファクチュールのメリットは、そのブランドのこだわりが凝縮されていることです。何か抽象的な言い方ですが、そのブランドが大事にしているコンセプトをダイレクトに技術者が忠実に作り上げることができることです。なので、マニュファクチュールをうたっているブランドの多くは、高い技術を持った職人が必要となります。時計好きの人の多くは、そのこだわりに惚れこむ訳ですね。
しかしデメリットがあります。それはどうしても高額になりがちということです。大きな工場で大量生産をするマニュファクチュールブランドもありますが、職人が1本1本作り出し、製造数も少なく希少性が高い故、手が届かいことが多くなります。
反対に、エタブリスールは汎用ムーブメントなので細かいこだわりがそこには入ることが基本的にありません。それを入荷し、時計に組み込むブランドがそこからオリジナルのカスタマイズを施して製品になります。その基本的なベースとなるムーブメントからの製造となるので、工程も少なくなるのでその分、製品としての価格が抑えられるというメリットがあります。
とはいうもののその技術は日進月歩、汎用ムーブメントとはいえ最近ではよくできている物も多くなっています。
まとめ
- マニュファクチュールは、自社でムーブメントも製造していること
- 厳格な決まりがないので、マニュファクチュールにも色々ある
- 反対の意味となるのは、エタブリスール
- そこだけを気にせず、気に入った時計を買え
人それぞれこだわるポイントは様々です。僕が最重要にしている部分は、デザインです。自分の好きなデザインは、見ていてテンションが上がります。ムーブメントがマニュファクチュールかどうかは僕にとって最重要ではないですが、テンションの上がる時計がマニュファクチュールだったってことはよくあります。
自分が気に入ったら、それが一番ですね。
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