各ブランドの “アイコンモデル” を考察する

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「アイコンモデル」や「ブランドの顔」という言葉は、そのブランドの売れ筋モデルに対して使用されている言葉です。中にはそれを超えて、ブランド名よりもモデル名の方が有名なモデルもあるとかないとか・・・でもよくよく考えてみると、そのブランドにとってカタログに象徴的なモデルを持つことは、全ての時計ブランドにとっての到達点の一つでもあり、しかもそのアイコンモデルにまで昇りつめた地位を保つことこそが、ブランドの大きな仕事でもあります。今回は、色々なブランドがその象徴的なモデルをどのように扱っているのか、素人目線で見ていきたいと思います。

“アイコンモデル” と言うと、ブランドにとっては中心的存在。それがブランドで一番高額モデルでなくてもです。天下一品に入ったらコッテリラーメンなんです。天一のアイコンはコッテリ。アッサリ頼んだらシバキます。朝マックを友達に頼んで、マック グリドル買ってきたら、これもシバク。朝マックのアイコンは粉の飛び散るバンズのアレ。グリドル、ほんとムカつく・・・話が脱線したが、時計の世界でも多くのブランドがカルト的な地位に昇り詰めたモデルをラインナップしています。そしてそのブランドはそのモデルの地位を維持し、定期的に新しくリフレッシュし、魅力に磨きをかけていきます。様々なブランドが様々なアプローチ経ている様子は興味深いものです。

Rolex

まずは当然、ロレックス。ロレックスはアイコンモデルがてんこ盛りです。アイコンの宝石箱や~です。これは凄いことですよね。全ての時計ブランドの中からアイコニックな時計を選ぶとなると、トップ20にロレックスのモデルがかなり入ってくると思います。サブマリーナ・デイトジャスト・デイデイト・エクスプローラ・デイトナ・オイスターパーペチュアル・GMTマスターII など、恐ろしいほどのアイコニックなモデルの数々です。

歴史的に見てロレックスがこれまで行ってきたことは、革命ではなく安定性と進化です。ロレックスは通常、非常に長い期間にわたってモデルを生産し続けています。そして数年に一度、わずかな変更を加えることで、時計を最新のものにリフレッシュし、代表モデルでの大きなサプライズは行ってきませんでした。これにより、信頼性が高まり、象徴的なモデルへとステップアップしていき、そのアイコニックな地位を確固たるものにしてきました。

そしてその象徴的なモデルの中から特別なモデルに希少性を持たす。ファッションやトレンドにほとんど反応しないようにも見て取れます。どちらかというと、トレンドを作り出す側に、もはやなっています。何十年もの間、同じモデルを生産し続けることは、自信の表れでもあります。もちろん、他の様々な要因もあります。しかし、全体として、多くを変化させないアプローチが、これまでのスタンスで成功を収めた秘訣かのかも知れません。

Omega

オメガはロレックスと違ったアプローチを取っているように思えます。象徴的なモデルであるスピードマスターを見てみると、ベースになっているスピードマスター プロフェッショナルは、今も昔も見た目は本当に変わったように感じないモデルです。興味のない人は、2,30年前のスピードマスター プロフェッショナルと現行のモデルを判別することすら難しいと思う。変更は最小限に抑えられています。

しかしオメガがロレックスと異なる点は、ロレックスは代表的なモデルを、カラーバリエーションで展開するのに対して、オメガはその代表モデルの世界を大きく構築してくところです。特に数年前まで、限定モデルなどを数多くリリース、ブランドは熱心にそのアイコンモデルに対して亜種的なバージョンを展開していました。

現在、ロレックスのデイトナには十数種類のバリエーションがあり、スピードマスターには100以上のリファレンスが存在します。ムーンウォッチはその中でも12、3本だけがですが、オメガのアイコンモデルに対するアプローチがよくわかりますね。アイコンモデルを多種多様なバリエーションで展開し、コレクターや愛好家により多くの選択肢を提供する方法ですね。オメガはこれに対して批判されることもありますが、たとえば、多くのバリエーションがあることで、コレクターが自分の好みに合わせてコレクションを楽しむ機会を提供しているということです。今は「多様性の時代」と言われていますので、ポジティブな要素と言えるでしょう。

Cartier

カルティエもそのラインナップに多くの代表モデルを持つブランドです。中でもタンクとサントスは、時計界全体から象徴的なモデルを選んだときにもランクインしてくるモデルです。カルティエは主にロレックスと同じアプローチを取り、代表的なモデルに対しては、最小限のアップデートをするブランドです。しかし、オメガの要素も含まれています。派生したバージョンが豊富にあり、そのいくつかはトレンドを反映させ、クラシックな定番もしっかりとある。そしてクラシックなバージョンと並行して、より手頃な価格帯もラインナップする。これにより、様々な予算や様々な好みを持つ層を広げています。

しかし、カルティエが異なる点は、独自のデザインをブランドの象徴にしたことです。白いダイアルや黒いローマ数字、青い剣のような針、そしてカボションリューズは、ブランドの象徴となっています。これは非常にテクニカルで、遠くからでもカルティエの時計、マイナーなモデルでも、ブランドをすぐに認識することができます。

 

即ち、カルティエがこのスタイルに基づき、まったく新しいモデルをリリースしたとしても、それはすぐにクラシックなカルティエの雰囲気を醸し出すということです。カルティエらしさというものを確立し、それがブランドを強化し、新しいモデルに即座に反映される。カルティエの強さはそこにあると思います。

Patek Philippe

パテック・フィリップは特別な存在ですね。象徴的なモデルとはなんだろう?時計が昔から好きで、「俺は正真正銘の時計好き」とかの人は、カラトラバ、エリプス、またはコンプリケーションモデルを言うのかも知れません。でも、やっぱりちゃうんです、今の時代。ノーチラスですよ、やっぱり。

現行では一番人気の三針デイトモデルはゴールド製のみとなっていますが、ステンレススチール製のRef. 5711は市場で最も注目されるチャンピオン級モデルの一つです。生産されていた時には、十年以上のウェイティングリストが存在。二次市場では定価の数倍で取引されていました。そして、パテック フィリップはこのモデルの生産を中止しました。このモデルは過剰なまでに注目を浴びているにも関わらず、収益面ではパテック フィリップにとって十分ではないモデルでした。その後継モデルであるRef. 5811はゴールド素材のみで製造されています。これにより、ノーチラスの異常なまでの過熱ぶりを完全に終結させるわけではありませんが、少しは沈静化しているのかも知れません。

そうした観点から見ると、パテック フィリップはそのアイコンモデルよりもブランドというものを高めるために努力しているのかも知れません。特定のデザインよりも品質基準と独自性に特化したブランドになりたいと考えているような。もし、今の経営陣ではなかったら、ステンレス製のノーチラスを、もっともっと製造していたに違いない。でもパテック フィリップはそのようなアプローチを選ばず、ブランドの独自性と伝統を重視。最も得意とするコンプリケーションなどに専念しています。これはまったく他と異なる戦略であり、優れたマーケティングの極意なのかも知れません。ブランドの長期的な持続可能性とステータスを強調し、時計業界での地位をさらに強化しています。

その他

パネライを見ていると、少し残念な気がします。というのも、アイコンモデルであるラジオミールを廃盤にしました。その結果、そのアイコニックな時計の派生バージョンしか製造していない状態です。オーデマ ピゲは好きなブランドですが、パテック フィリップとは真逆の戦略と言えます。とにかくロイヤルオークというイメージ。でもそれは自信の表れで、それだけオーデマ ピゲがロイヤルオークを愛しているとも言えます。しかしそればかりではなく、今ではCode 11.59 バイ オーデマ ピゲ が人気モデルへと飛躍しています。

まとめ

というわけで、ブランドの戦略というのは、その戦略にそれぞれのカラーがあり、何が正解かは神のみぞ知る、です。しかし大成功しているブランドは、正解の道を紆余曲折しながら進んでいったのでしょう。

って、こんなことに興味あるのは僕だけか⁈

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