URWERK AMC(Atomic Mechanical Control) Project

ウルベルクURWERK)は、独立時計師のフェリックス・バウムガルトナーとデザイナーのマーティン・フレイによる共同ブランドとして1997年に設立され、2003年にはハリー・ウィンストンOpusを手掛け、彼らの名前が一躍世に広まることとなりました。

今回紹介するモデルは、約200年前アブラアン・ルイ・ブレゲAbraham-Louis Breguet)が開発した「サンパティーク・クロック」を元に、8年もの時をかけて開発した電子時計で、2019年フィリップス・オークション “Game Changer” にて、約3憶1500万円で落札されました。

ちなみに「サンパティーク・クロック」とは、クロックリストウォッチ、腕時計を置時計の12時位置に設けられたくぼみにセットすると、自動的に巻き上げを行う時計。

恐るべしブレゲですね。トゥールビヨンからミニッツリピーターなど複雑機構を発明したのは有名ですが、こんなものまで作っていたんですね。そしてこのAMCは、機械式の腕時計(子機)とGPSに同期した原子時計の置時計(親機)がセットになった時計システムで、腕から外した腕時計を置時計にセットすることで巻き上げ・時刻合わせ・緩急調整を自動で行い、常に最適な状態を保つコンセプトです。

別途GPSのアンテナが付属しており、置時計内部の原子時計はGPSによって校正されるようになっています。

AMCプロジェクトは、連結する2つの自律システムから構成されるたハイブリッド時間測定装置です。最初の部分はAtomolithe/アトモライトという固定ベースで、重量約35キロの原子時計が、平均的なコンピュータータワーほどの大きさをしたアルミニウム製ケースに収まっています。2つ目の部分は可動要素で、腕に装着するかベースに設置される、完全な機械式腕時計から成ります。

機械式時計が腕に装着されている場合の精度は、4Hz28,800振動)で動くその機械式振動体とその時計が委ねる条件により決まります。この時計がベースに設置されている時は、複雑で巧妙なシステムがこれら2つの要素の時間のずれを感知し、腕時計の機械式ムーブメントを高精度の原子クロック上で計時的に一致させ、腕時計がベースと連動します。

腕時計をベースに設置することにより、その精度を修正するだけでなく、精度を高めるためその内部機構を調整します。これらの微調整が定期的に行われると、この機械式ムーブメントの心臓部への影響は、ペースメーカーに似た効果があります。時間が経つにつれ、機械時計の計時性能が原子時計のものに近くなってきます。

AMCは、このようにして機械式時計の限界を打ち破り、計時測定においての最高峰の振動体を築き上げたのです。機械式振動体は完璧ではなく、もしかすると将来的にもそうなることは難しいかもしれません。ですが、原子的な基準と連結されることにより、自身で完成する能力を保持します。

原子時計のように、AMCプロジェクト機械式腕時計も新しい設計のものです。ウルベルクの特徴であるパワーリザーブ表示や、4日間のパワーリザーブを保証するツインバレルを踏襲しています。この腕時計は ≪oil change≫ 表示も同様に装備し、ムーブメントメンテナンスの時期を知らせます。時計が機能して3年半後には、オーバーホールをすることを推奨してきます。

裸眼では見えませんが、この時計の最も巧妙な特性はムーブメントを詳しく見ていくと分かります。この腕時計は基準となるクロックに一致するように設計されています。この原子時計もまたウルベルクの工房で設計製造されており、ベースであるAtomolithe/アトモライトウルベルクの腕時計を巻き上げ、正確な時刻に合わせ、そして、歩度を調整します。

最も技術的に難しいのは、腕時計の歩度の調節です。歩度というのは、テンプが振幅するリズムのことであり、理想的には、腕時計の歩度が完全に時間の基準と同期運動し、不変の歩度を持ち合わせることです。しかし実際には、完全に安定した振動体は存在せず、すべての計時システムで歩度の微変動が起こります。機械的振動体の安定性は、原子時計のものと比べ本質的に劣っています。AMCの時計により、ウルベルク原子時計が自動的に機械式腕時計原子時計の正確な時刻に合わせる方法を見つけました。通常この歩度調整は、時計技師が手作業で行います。

時計の歩度は、通常テンプのひげゼンマイの実質的な長さを統制する緩急針の形で、調速機構により制御されます。オーナーが時計に遅れや進みに気付くと、時計師に時計を預け、そこで緩急針を動かすことにより、テンプのひげゼンマイの有効的な長さを変更します。この作業により、時計の歩度を早めたり遅くしたりします。

こちらではAMCの固定ベースである原子時計が、腕時計上のプッシュボタンを作動し、腕時計内部にある機構を始動させます。この働きにより、極めて高い精度で腕時計と原子時計の秒表示のプラス、または、マイナスのずれを感知することが出来るのです。この機構は、秒車の軸上の半月型カムに沿って閉じる一対のクランプから構成されます。半月型カムの周りで変動するクランプの位置が、機械式ムーブメントに行う修正に影響を及ぼします。

情報と修正は、この巧妙な機械的装置により伝達され統制されます。腕時計が頻繁に連動されればされるほど、ベース装置を構成する原子時計のリズムに近づきます。 腕時計がベースに設置されている時は、手動で連動をさせることができます。手作業での介入がない場合、Atomolithe/アトモライトは腕時計を事前に決めた間隔で連動させる自動プログラムの様々な段階に従います。2日で1秒という通常のクオーツ振動体の歩度のずれに対し、317年に1秒とう精度の時間測定テクノロジーにより、原子時計はスタンダードなクオーツムーブメントよりはるかに正確です。着用者の生活習慣や活動に応じて計時機構システムを最も正確に調節するため、腕時計の日常的な着用と定期的な連動の適度なバランスが重要です。

2つ目の方法は歩度の調整とは異なり、原子時計の分と秒と腕時計の表示を正確に連動させることです。

腕時計の歩度を自動的に調整する機構とは反対に、独特なのはクロノグラフのリセット機構の輪列に類似する秒と分の連動機構です。歩度の調整のように、分と秒の時刻合わせも原子時計がプッシュボタンを始動し行います。このプッシュボタンが腕時計内部にある2つのレバーのシステムを移動させ、分針と秒針と関連するオフセットしたハートカムの上に圧力をかけます。これらのハートカムは、そのレバーに触れると、文字盤側面にある0の目盛りにそれぞれ帰るよう調節されています。

3つ目の作用は腕時計の巻上げで、巻上げシステムはシンプルです。ベース部分には腕時計のリュウズを作用する作動棒を備えており、夜取り付け台に腕時計が置かれている間に巻き上げます。

とこのような長々とした説明をしてもなかなか理解できない部分が多いのですが、まとめて言うと、

なんか凄い時計

ということです。超正確に時間を合わせることのできる手巻き腕時計(デッカイ母艦付き)というのが、このAMCなわけです。

「電波時計で全て解決するじゃん!

とか絶対に言っちゃいけません。