GMTマスターは、2つのタイムゾーンを同時に表示できる、パイロットウォッチの代名詞とも言えるモデルです。ベゼルがツートーンでカラフルなところが今では大人気となっており、かつて存在したブラック×レッドのコークと呼ばれるベゼルのモデルが毎年新作予想で登場するほど待ち焦がれている。2つのタイムゾーンから今では3つのタイムゾーンを表示できる現代のGMTマスターIIまで、歴史的な背景を交えて詳しくお伝えします。
1. 誕生の背景
- 1950年代: ジェット旅客機の登場により、海外旅行が一般化し始めました。パイロットたちは、異なるタイムゾーンを頻繁に行き来するようになり、2つの時刻を同時に確認できる時計が必要となりました。
- パンナム航空との協力: 当時、世界最大の航空会社であったパンナム航空は、自社のパイロットのために、高精度で信頼性の高いGMT機能付き腕時計を必要としていました。そこで白羽の矢が立ったのが、ロレックスでした。
- GMTマスターの誕生: 1955年、ロレックスはパンナム航空との共同開発により、初代GMTマスター Ref.6542 を発表しました。
2. 初代GMTマスター Ref.6542
- 特徴: 24時間表示の回転ベゼルと、独立して動くGMT針を備え、2つのタイムゾーンを同時に表示できました。
- ベゼル: ベークライト製で、赤と青の2色で昼夜を区別していました。
- 愛称: ベークライトベゼルが経年劣化で褪色し、独特の色合いになったことから、「トロピカル」という愛称で呼ばれています。
3. GMTマスター Ref.1675
- 改良点: 1959年に登場。ベゼルがアルミ製になり、耐久性が向上しました。リューズガードも追加され、防水性能も強化されました。
- ロングセラー: 約20年間製造されたロングセラーモデル。
4. GMTマスターII Ref.16760
- GMT針の単独操作: 1982年に登場。GMT針を単独で操作できるようになり、より使いやすくなりました。5年間の製造という短命だったため、希少モデルです。
- Cal.3085: 日付の早送り機能が追加された、新しいムーブメントを搭載しました。
- 愛称: 通常のGMTマスターよりケースに厚みがあることから「ファットレディ」やセクシーダイナマイトの「ソフィア・ローレン」と呼ばれています。
5. GMTマスターII Ref.16710
- 改良点: 1989年に登場。ケースデザインが刷新され、より洗練されました。
- バリエーション: ベゼルは、黒、赤青(ペプシ)、赤黒(コーク)の3種類がありました。
- レア表記: ダイアル上のプリントに、GMT-MASTER IIの “II” が棒状にプリントされた「スティック」と呼ばれる文字盤が、レアな個体として希少価値が高くなっています。
6. GMTマスターII Ref.116710
- セラクロムベゼル: 2005年に登場。セラミック製のベゼルを採用し、傷つきにくく、色褪せしにくくなりました。
- グリーンGMT針: GMT針が緑色になりました。
7. GMTマスターII Ref.126710
- ジュビリーブレスレット: 2018年に登場。ジュビリーブレスレットを採用したモデルが登場しました。
- Cal.3285: 精度とパワーリザーブが向上した、新しいムーブメントを搭載しました。
8. GMTマスターIIのバリエーション
- ベゼル: 赤青(ペプシ)、黒、青黒(バットマン)、茶黒(ルートビア)など、様々なカラーバリエーションがあります。
- 素材: ステンレススティール、イエローゴールド、ホワイトゴールド、エバーローズゴールド、コンビなど。
今回は記載していませんが、Ref.16700というGMTマスターIIと並行して登場していたGMTマスターもありました。そして現行モデルにはロレックスでは唯一のケース左側にリューズの付いた「レフティ」と呼ばれるモデルも人気を誇っています。
GMTマスターは、パイロットウォッチとして誕生しましたが、その機能性とデザイン性から、世界中の旅行者やビジネスマンに愛用されています。時代と共に進化を遂げ、現在もロレックスを代表するモデルの一つとして、高い人気を誇っています。