シン・レアモンクエスト 第4話
先日、異動先の新しい部署で自己紹介をしたとき、趣味はドリームキャストのシーマンと答えてここ一年で最大にスベったオサーンです。ポストペットって言った方が良かったのか、一人反省会を開いてます…
実は数日前に水道屋をしている友達(便宜上、Nという)から連絡が来た。
「ロレックスの店に入る予約取ったし付いてきて、ジュルッ」
彼は話をしている途中でヨダレをすする癖がある。慣れている僕は良いが、たいてい初対面の人は気持ち悪そうな顔をしている。それはそうと、彼は事前予約に当選したというのだ。私は毎回、大ハズレしているというのに、その彼はたった一回の応募で当選したという。
「京都駅前で待ち合わせ ジュルッ」
と、一方的に待ち合わせの日程を決められ、電話を切られた。
私はその日、仕事があるものの、新しく店舗がリニューアルされて以来今まで入店したことのないロレックスの店舗なので、何とか時間を取り、待ち合わせの場所に向かった。
少し早めに着いたので、久しぶりに京都駅周辺をウロウロする。
この駅の中にある大階段は、”JR京都駅ビル大階段駈け上がり大会” という人気イベントを始め、特に外回り営業のサラリーマンにはサボリまくれるエリアが多くあるのでありがたい場所でもある。
時間になったので待ち合わせのポイントに向かうと、やってきた。
ごく普通の大衆車。車に関心のない僕は全然構わないが、車内には仕事で使う工具やマスキングテープ、水道修理用のパッキンなどが散乱していてあまりの散らかりように嫌悪感を抱く。
「まぁ、散らかってるけど入ってーな、ジュルッ!」
こういうガサツな性格は一生治らないんだろうな、と自分を納得させ乗り込む。しばらくしてロレックスの話をする。
私:「京都大丸、俺はまだ入ったことないから嬉しいわ。基本的に一人でしか時計屋には行かんけど、予約制になって入ったことのない店やし、ありがたい。」
そういう私に彼は言う。
「京都大丸?そんなこと、一言も言うてへん。」
そういえば、そんなことは確かに言ってなかった。となれば、梅田阪急か、大丸か。まぁいい。用事があるが、夕方には帰ってこれるだろう。こうなったらそこまで行くしかない。
意外と運転の丁寧なN、気が付けば、助手席でウトウトしていた。そのまましばらく車を走らせるN、高速道路に入る。目が覚め、ボ~っとしていて一瞬気付くのが遅れたが、”大阪方面” ではなく “名古屋方面” に入っている。
「あっ、反対!」
咄嗟に大声を出した僕に驚いたのか、大量のヨダレが運転している彼自身の太ももの上に粘度の高い滝のように流れ落ちる。
「ジュルジュルジュルッ、ビックリするがな、急に!ジュルッ」
そう言われても、行き先の間違えに気付けば誰でも指摘はするだろう。
「ジュルジュルッ、おうてる、ナビ通り、こっちや、ジュルッ」
まさかと思ったが、事前予約は名古屋だった。
途中、新名神高速道路の集中工事で時間をロスし、運転している友達もオシッコにいきたそうにモジモジしながら到着。もう日が沈みかけている。予約時間が過ぎてるのではないか?心配になってきた。駐車場に車を停め、立ち上がった彼の運転席を見て絶句。これは彼のヨダレで汚れているのか(オシッコかも)・・・ちなみに彼の車のシートはこんな感じだが、見たい人だけ見てください(閲覧注意)。→ここから開きます
時間が迫ってきたので急いで店舗へ向かい、少し予約時間を過ぎた辺りで到着して入店した。
店:店員 N:友達の水道屋 オ:オサーン
ドアを開けてもらい入るなり、事前予約が当選した客という優越感なのか知らないが、ちょっと偉そうな態度に見えるN。
N:「予約のN(水道屋)や。選ばれし者やな。んでこれ、ジュルル、俺の連れ。邪魔するわ。」
店員さんは明らかに苦笑いをしつつ、淡々と対応をする。
店:「お待ちしておりました、N様。恐れ入りますが、スマートフォンで受信されたSMSからリンクをタップし、表示をお願いします。」
Nは不慣れなスマホを出し、何でそうなったか理解できないほどギトギトの画面を一生懸命タップしながら店員さんに確認を取る。身分証明書の提示も求められたので、免許証を見せるN。そして得意げにゴールド免許を自慢する。別にそれほど凄いことではない。
N:「こいつもゴールドやねん、免許。オサーン、おい、お前も見せたって。」
凄く恥ずかしい。ゴールドを自慢していることが恥ずかしい。デリカシーの無さも相変わらず恐ろしい。何となくこの時に感じたが、どうやら本人は、事前予約が当選した時点で希望モデルが買えると勘違いしているようだ。
担当の店員さんが円卓の椅子に我々を案内し、少し雑談から入ろうとする。
店:「今日は黄砂が・・・」
その言葉を全く聞く気もなく、自分の話に入るN。
N:「遠いな、ここ。遠い。」
耳を疑ったが、自分で名古屋を予約しておいて、遠いと文句をいう。
店:「どちらからお越しなんですか?」
会話を合わせてくれる店員さんが気の毒に思える。
N:「俺は大阪やねんけど、こいつ京都。迎えに行ってから来てん。」
このまま自分の話を延々と続ける。いつまで経っても話が進みそうもないので、しびれを切らせて割って入る。
オ:「んで、何が欲しいって言うてたっけ?」
その助け舟に便乗して店員さんも聞く。
店:「もう希望モデルを決められているのですか?」
N:「ん?そや。デイトナ欲しいねん、デイトナ。」
満面の笑みで答えるN。
店:「素材の希望とかはございますか?」
カタログを広げようとする店員さん。
N:「素材?ウールとかコットンとかあったらおもろいな、コットンのデイトナ、ワハハハ!」
一緒に来るんじゃなかったと後悔した。一人で笑っているN。
オ:「そんなんええねん、マジで。ステンレスやろ?」
面倒臭いので、僕が答えてしまう。早く帰りたい。
N:「お前、先に言うなや。当ててもらおうと思ってたのに。」
そんな言葉は無視して店員さんにいう。
オ「白でも黒でも文字盤の希望はないようですので、よろしくお願いします。」
このまま長引くと、一生この店に来れなくなりそうなので一気にまとめ上げた。
N:「そや、デイトナが欲しい。色は別にええねんけど。」
店:「はい、かしこまりました。それでは在庫の方を確認してまいります。」
店員さんが去ったあと、しょうもないことをいうのはやめてくれと懇願した。もう早く帰りたい。
まもなく店員さんが戻ってきた。
N:「あれ、もう帰ってきた。手ぶらやん。」
店:「申し訳ございません。在庫の方がない状態でして・・・遠方からお越しいただのですが…」
N:「ジュルルルルル!ッ! え?マジで?そんなことってある?え?マジで?ジュルッ」
なぜか今までヨダレが止まっていたN、ここにきて一気に流れ出てきた。
オ:「ないって。また今度来よ。今度はあるかもやな。お邪魔しました。ありがとう。」
このまま絡みだしたら面倒なことになりそうなので、切り上げる。
店:「ありがとうございました。」
Nの腕を引っ張り、店をなんとか後にすることができた。
店を出て、「お前、もう勘弁してくれよ。俺、早く帰らんとあかんねん!」とちょっと苛立ちながら言い、車で帰る余裕はないので名古屋駅まで送ってもらった。
しかし急いでいるとはいうものの、せっかく名古屋まできた。駅前の高島屋ウォッチメゾンのロレックスも、万が一、入れたらラッキーと思い、Nには内緒で覗いてみる。
「本日、既に順番で入っていただくお客様でいっぱいで・・・」
でしょうね。朝から並んでいるもんね、いつもここ。夕方に来ても無理だもんね・・・駅へ向かい、取りあえずどの新幹線でも来たら乗れるように、新幹線の自由席チケットだけスマホで予約して取り、飛び乗った。
自由席だが席も空いていて、座って帰れた。しかし、仕事の時間には戻れなかった・・・それにしてもこの新幹線のエクスプレス予約、初めて使いましたがICカード(私はICOCA)と連携したら、発券の必要もなくメチャ楽ですね。
最近のツイッターを見ていると、結構デイトナでも買えている人が多いようなので実は期待していたのですが、ムリでした。というか、Nはどこ行ってもムリっぽいですけどね。僕は事前予約が全く当たらないので、今月のマラソンは行けないかも知れません。
でも今週は僕、デートの約束もあるから、ルンルンなのです。
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