50歳も目前となり、小便をしたあとに死ぬほど湯切りしているのにズボンを履いた瞬間に I’ll be back してくるのに困っているオサーンです。
12月のある日、日本の北部への出張話が持ち上がった。関東から北への出張は、何かと理由を付けて断っている僕。今回も断るつもりだった。しかも時期が悪い。12月とならば、雪が積もっているに違いない。断固として行かないという僕の強い想いは揺るがない。
「先輩、”すすきの” ってご存じですか?」
あまりにも安直な、僕の下心を軽くみている係長ども。当然知っている。だがこの僕がそんなことで心変わりするはずもない。そんな時、今年の新採くんがスマホを片手に近づいてきた。
「この子、予約完了しました!」
ムム、デキル・・・画面の中の美女も恐らく無加工。しかも、予約完了というパワーワード。でもね、そんなことで僕は動かないんだよ・・・
「行くぜっ!」
仲間たちが僕を必要とするならば、行くしかない。それ以上でもそれ以下でもない。下心なんかでは決してない。求められているから行くまでだ(汗)。
サブッ!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
寒さが普通じゃない。一瞬にして後悔する。やっぱりこの時期、氷点下がデフォの場所はハンパない。歩道には雪がしっかりあり、完全に凍り付いている部分は滑る。そんな歩道を地元民は平気な顔をしてツカツカと歩いていく。こっちは一瞬にして筋肉痛になるほど、身体に力が入っているというのに・・・
あの有名な時計台も、実際に見ると「・・・ショボ」と思ってしまった。感覚的に、GMTマスター(グリニッジ・ミーン・タイム)でお馴染みのグリニッジ天文台のようなものを想像してしまう。やはり日本の時計台といえばあの滋賀県の老舗、雄琴の “泡の国” だな・・・
いやいや、そんなことより仕事が大事。休む間もなく、仕事に取り掛かった。
仕事に熱中するがあまり、貴重な時間がドンドン過ぎ去っていく。札幌には2店舗、ロレックスがある。そう、これは行かなければならない。2024年最後のマラソン。
やっと仕事も終わり外に出るともう暗くなっており、時間は17時。我々一団はご飯へ行く流れだが、僕はとりあえず1店舗目へ足元に気をつけながら急いで向かった。
今日はここ1店舗だけしか行けないか・・・丸井今井という、ちょっと語呂が気持ち悪いデパートへ。
いや~、外はちゃっぷいちゃっぷいですねぇ~。指がもう動かんっす。
は、はい・・・そうですね。寒いですよね。
ご希望のモデルがございましたら・・・
手ごたえが全くない。話を続ける感じではない。取りあえず希望モデルを伝える。
ただいま、そちらのモデルについては在庫はございませんでして、申し訳ございません。
その会話、僅か1分。在庫確認もなく、時間が時間なのでさっさと帰ってもらおうという態度が透けて見える対応。「そうですか、また来ます。」という言葉を残し、涙で若干凍るまつ毛を拭いながら食事を取っている仲間と合流した。
食事も終わり、ソワソワし始めた僕の背後に黒子のようにいつの間にかいる新採くん。
「30分後に取ってますので!」
北の大地でスプラッシュマウンテン!
無事にイベントも終了し、新採くんとタクシーに乗り、ホテルへチェックインするために駅へ向かった。そう言えば、なぜ札幌市内にホテルを取っていないのか・・・少し電車で揺られること約30分、そこから再びタクシーに乗りホテルへ向かった。
雪がパネーよ、ここ!
確かにホテルは狭いながらも綺麗なホテルだったけど、あまりの雪深さとなぜ札幌市内じゃないのかを問いただすために、ホテルを予約した係長に説明を求めた。ホント、新採くんの方が良くできるんだなぁ・・・ホテルは凄く綺麗で良かったんですけどねぇ・・・
翌日、再び駅までタクシーで来たが、タクシーをホテルに呼ぶのも一苦労。指定の時間に迎えに行けるかわからないと全部のタクシー会社に言われたそうだ。だから札幌市内じゃないとダメなんだよなぁ・・・
そんなこんなで機嫌が悪くなった僕は、この日の打ち合わせの参加を断固拒否、札幌マラソンに専念することにした。その前に、腹ごしらえをするために、ラーメン屋へ一人で向かった。
列に並んで待っているだけで、足の指先が凍傷になるんじゃないかというぐらい冷える。こんな寒さは今までに経験したことがない。もうギブアップ寸前まできたが、なんとか耐え忍んだ。
札幌ラーメン悠の “昆布とほたての塩らーめん” を堪能。おいしゅーございました。しかしあまりに身体が冷え切ってしまったので、昨晩行った “お風呂” へ再度温まりに行こうか迷うほど参ってしまった。
とはいうものの、限られた時間しかないので向かうはロレックス。
ロレックス正規店へ向かい、チャンスをうかがいます。1店舗は完全にアウト。ラストチャンスに賭けるのみ!
まいど、僕はロレックス大好きマンです。
いらっしゃいませ。ロレックス、お好きなんですね。ありがとうございます。
そうなんです。好きになってかれこれ25年ぐらいです。
すごく感じのいい店員さん。それから北海道へ来た目的や仕事のこと、地元の話など約20分ほど話し込んだ。来店する客もそれほど多くなく、気兼ねなく話ができた。
なかなか含みのある言葉を残し裏へ消えていった店員さん。もしかすると・・・とドキドキしながら待つ。その間、店内をウロウロしてサンプルを眺めてはまた座り、落ち着かない。10分とまではいかないが、それに近い時間待つ。これまで経験したロレックス在庫確認最長待ち時間を更新したに違いない。
そしてとうとう出てきた店員さん。片手には “トレー with 布”。心の中で、デストラーデの “引きガッツポーズ” を連発する。
布をオープンしてもらうと、出てきたのは僕の希望とチョット違った。
こ、これでもいいんだけど・・・デイデイトは一つもないですか?
デイデイト、ですか。一本だけございます。すぐにお持ちします。
なぜ一緒に持ってこないのかわからなかったが、あまり期待できないまま待っていた。そして出てきたモデルが実は僕が長年探し求めていた文字盤だった。
それは遡ること20年以上前、当時はインターネットなどがまだ普及しておらず本屋で手にした時計雑誌。ロレックスという時計に魅了され始めて間もない頃の私がその雑誌で見たラグジュアリーな文字盤のロレックス。「日本では出回りのない文字盤」として少しだけ写真が紹介されていたが、元々当時はデイデイトは全く人気もなく、価格の一段と上がる貴石の文字盤は市場でも売れないので流動が少なかった。そもそもその当時はかなり今から考えると破格の安さだったが、それでも無垢の設定しかないデイデイトを買えるお金も持ち合わせていなかった。その心に残った個体がこれだった。
マラカイト(孔雀石)という、グリーンの濃淡縞模様が美しい天然石。ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンと、イエローゴールドとのカラーマッチングが、僕の中ではロレックスの最高傑作と思っていた。そんなマラカイトを使ったモデルが実は2021年辺りのシークレットモデルとして新登場していたことは知っていた。
しかし恐らく1年~2年程度でシークレットモデルは製造を終了するはずである。だからもう手にすることがないと思っていた。現行モデルなら、36mmにあるターコイズかカーネリアン、40mmのオニキスが出てくると思っていたが、思わぬ出会いに心臓が飛び出そうになった。
帰路に着く飛行機の時間もこうなれば全く気にならず、しかもこれまで感じたことのない達成感。時間が経てば、またロレックスの物欲が湧いてくるのかも知れないが、心の片隅にある欠けていたピースが数十年の時を経て埋まったような感覚を得た。
飛行場に着くと、僕の乗る予定だった飛行機は悪天候のために(幸い)遅れていた。
お陰でギリギリ間に合い、無事に帰宅することができた。しかしロレックス以外に、北の大地でもらったものがあった。
それは、高熱を発するインフルエンザ。2年前は新型コロナで年を越したが、2024年-2025年はインフル。体温も40度オーバーでした。終始、マスクをして過ごしていたが、思い起こせばマスクどころかパンツまで脱いだお店があった。憶測の域でしかないが、そこが原因か・・・ゾフルーザという薬のお陰で、回復は早かったが。
で、ゲットした時計は凄く僕的に気に入っている。いや、もうこれ以上ないぐらい嬉しい。
もちろん、プラチナのデイトナやル・マンに憧れがないと言えばウソになるが、一旦、ロレックスを追い求める旅にエンディングが訪れた。どちらにしても、半年は買えないというルールも誕生した。
しかし新作発表もまたあるだろうし、半年キッカリのタイミングで復活している可能性も大いにあることを宣言し、2024年にひとまず、幕を降ろすことにした。
そして皆様、
明けましておめでとうございます!
素敵な1年でありますように!!
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