レアモンクエストIII そしてポンコツへ… 2

電話を掛けるジェスチャーで親指と小指を立てるアメリカンスタイルをマスターしたものの、右手の人差し指でダイヤルを回す仕草をどうしても同時にしてしまうオサーンです。

前回の続きです。自分のポンコツっぷりを披露してしまい、むせび泣いた私。

流した涙の塩分補給

やはりここは気持ちを切り替えて行くしかないと心に誓い、前を向いて歩きます。でもそう言えば、心斎橋大丸も予約制だったような・・・私は予約をしていないので、当日のアポなし突撃、行くしかない!

が、しかし・・・

並んでんぢゃん!

1ヵ所の待ち時間で時間を取ってられない。ここから最寄りの難波高島屋は予約制ではなかったはず。時間のかかるところは、見切りをつけてサッサと次へ向かいます。

心斎橋から難波までの地下鉄料金は180円。急いでいてもそれを払わず足で稼ぐのがランナーたるもの。決してケチなのではない。すぐに乗り物に頼るようなメンタルではこの群雄割拠のロレックス争奪戦に勝てないのだ。しかし商店街をフォレストガンプのように走ると周りに迷惑がかかるので、心斎橋筋を競歩で進みます。

せっかく地下鉄を使わなず競歩で進むのですから、最近は落ち着きを取り戻しているswatchさんにも少し寄ってみます。関西唯一の取扱店と一応アナウンスされているムーンスウォッチがあるのかどうかを通りすがりながら聞いてみます。

店内には女性店員が2人おられ、一人のお姉さんは前に話をしたことがあり感じ良かった。なんて思っていたが時計のメンテナンス中で忙しそう。もう一人のお姉さんは展示品の場所を調整している。こちらに声を掛けてみる。

「すみません。そこにディスプレイされているムーンスウォ」

「ありません」

ピッチャーのストレートよりも返球するキャッチャーのボールの方が早いじゃねーか。まぁいいさ、俺の本命はそこじゃない。そんな攻撃、痛くも痒くもないわ。

ブチブチ独り言を言いながら心斎橋から難波まで約10分(競歩で)。到着です。

時計コーナーに入りロレックスへ。こちらは並ばずに電話番号を伝え、自分の番になれば呼ばれるシステム。入口には、ここでよくお見受けする男性店員さん。反り返るほどのプレーリードッグ姿勢と上品な話し方を意識されている(私とは合わない)店員さんに、

「入店キボンヌ」

と伝える。するとナンタカ(難波高島屋)のプレーリードッグが、

「只今の待ち、30組ほどとなっております(ニチャー)。」

と笑顔。今日中に入店できるのかは不明だが、やれるだけのことをしておきます。レシートのようなものを受け取り、お願いすることとした。一度梅田に戻って入店チャンスを狙うか、天王寺へ行きあべのハルカスを目指すか地下鉄の改札付近で悩んだが、筋肉ルーレットの結果、あべのハルカスに決定。地下鉄に乗り込みます。

終点の天王寺で降り外へ出ると快晴。そう言えばこの近くには大人の街が存在する。それも大正~昭和にタイムスリップしたような場所。そう、それは飛田新地。

画像はイメージです

建物の玄関に若い女性(ホステス)と客引き(仲居さん)がいるという絵に描いたような遊郭。一応、料亭という定義づけとなっています。

それを知りつつスルーとは男としてできない。まず第一に、このロレックスにも入れない悪い流れを断ち切るには、いつも通りのルーティーン(最近覚えた単語)ではいけない。そして疲れた身体を癒せるのは、料亭しかない。

そう悟った私は早速、ダウジングをしながら飛田へ向かいます。

天王寺駅から飛田新地へ向かう道中は高層マンションが立ち並ぶニュータウンのような雰囲気があります。一見、こんなところに遊郭があるとは思えません。

駅から徒歩約10分、この道路を挟んで向こう側は、異世界となります。昭和の雰囲気漂う商店街があります。

マンションが立ち並ぶ世界と異世界との境界にはブロック塀があり、異世界は地面も下がった土地となっています。さて、どこで楽しもうかなぁ♬・・・しばらくしてふと我に返る。

子供達が学校へ行ってる間に(20分16,000円で)何してるんだ・・・

踵を返し、あべのハルカスへ舞い戻ります。若干、股関節に痛みを感じるが身体は(気分も)軽くなっている。財布も軽くなってしまっているがそれは仕方がない。

するとあべのハルカス地下の入口で並んでいる列を発見。取りあえず列があると気になるので聞き込みをする。最後尾は男性だったのでスルーし、その一つ前に立っていた30代前半、松たか子を2,3回ぶん殴ったような感じの女性に聞く。

「何に並んでるんですか、ベイベ?」

尋ねてみると、バターバトラーとかいうお店がこの日オープンしたので買い求める列だという。東京駅の八重洲口のところにあるヤツぢゃないのか?バターの匂いがプンプンしてるやつですね。

ロレックスもこの調子で並んでたらヤダなぁ・・・なんて思いつつ向かいます。すると意外とすんなり入店。店の中央にはステンレスのサンプルモデルが陣取っている。

店員:店  / オサーン:オ

店:「お伺いしましょうか?」

男性店員が近付く。

オ:「ディスプレイされているサンプル、良いですね。」

軽いジャブを入れる。すると男性店員が言う。

店:「あぁ、オサーンさん。」

オ:「??」

私は男性店員から買ったことがない。だいたい、この店員さんの記憶がない。

店:「当店で〇〇や□□をご購入いただきましたよね。」

確かに買った。でもなぜ彼が知っているのかわからない。失礼にあたるかも知れないので、私も今まさに思い出したように距離を縮めて話をする。

オ:「そうそう、あの時は嬉しかったよ、ブロー」

男性店員にはヒップホップスタイルでの対応がセオリー。

店:「今は何をお探しですか?」

これにも同じぐヒップホップアンサー。

オ:「サブマリーナですYO!」

間違えた。思わず、ですよ。が出てしまって場がシラける。かすかに遠くから木魚の音が聞こえてくるぐらいの沈黙がながれる。

店:「そ~ですねぇ。今は在庫がないです。」

在庫の確認で奥へ行くこともなく無表情でのアンサー。すんなり店内に入れてテンションアゲアゲで入店したものの、全くもって感触がない。まるでClubhouseブームのように一気に意気消沈(クラブハウスってどうなったの?)。

今から神戸まで行く気も起らず、今回の努力を伝えるべく友達へコールする。

「おう、どした?」

「今日、久しぶりにロレックス回ったけど、店に入れたのが2件だけでアカンわ。」

「そうなん?夏も終わるしサブマリーナー余ってきてるやろ、どの店でも。」

スーパーで安売りしている鶴瓶の麦茶のような感覚か。こんな程度の悪いヤツと話をするのは疲れる。

「取りあえず回れるだけ回るし、期待せんと待っといてくれ。」

自分も好きな時計を見れるというだけで、ちょっとは満足感に浸れたので良いっちゃ良いのだが、次にいつ来れるかがわからないので、難波から梅田へ戻りながら再度、入れるところは少し待ってでも入ろうと考える。

そしてその時は急に訪れた。とある店舗に入り、初めてお話する店員さん。

店員:店 /  オサーン:オ

店:「ご案内させていただきます。何かご希望のモデルなどはございますでしょうか?」

話し方も丁寧な店員さんで、好感が持てる。

オ:「実はですね、プロフェッショナルモデルなんですが・・・人気で結構買えないパターンが多いですよね。」

店:「最近はどのモデルも大変品薄となっておりまして、ご迷惑をお掛けしております。」

うむ、客への気遣いも慇懃無礼ではなく素晴らしい。

店:「ステンレスのモデルなどは、一度購入されると制限がかかってしまうモデルがございまして、どういったモデルをご希望なされてますか?」

オ:「制限モデルの枠はいつも空いておりますが、今回はサブマリーナのコンビを探しております。」

丁寧な対応には丁寧に返答する。

店:「ブルーとブラックがございまして、どちらかご希望ございますでしょうか?」

オ:「ブルーを探しております。」

店:「在庫の方を確認してまいりますが、他にご希望のモデルはございますか?」

そこで伝える “他の希望モデル” に引っかかることがあるのか?それならお言葉に甘えて伝える。

オ:「GMTマスターIIのメテオライトかデイトナのメテオライトも探しております!」

ここぞとばかりに、最難関モデルをぶっこんでみる。

店:「かしこまりました。では在庫確認をしてまいります。」

待っている間、普段の私は周りの人間ウォッチングをしている。今回は先を急いでいるので、少しソワソワしている。

店:「お待たせいたしました。〇〇の在庫が確認できましたのでご案内いたします。」

オ:「え~!本当ですか?」

この瞬間、周りの在庫確認待ちのランナー達に勝ち誇った顔をしたのは言うまでもない。取扱いの説明や転売禁止などのお話を聞き、商品を手にして足早に去る。

久しぶりに回ったロレックスでの購入。ここ最近ではプロフェッショナルモデルを購入することの難しさを目に耳にしてきた私なので、ロレックスの店員さんと幸運の女神に感謝した。恐らくあの16,000円の嬢が、女神だったに違いない・・・

そして自宅へ持ち帰り、手に入れた時計を見て(その他の出来事も思い出して)ニチャと笑うオサーンでした。