レアモンクエスト DAY2
課長会という各課の課長が2ヶ月に一度集まり、今回は会議の後に京都の祇園へ行った。数人のホステスがおり、話が盛り上がる。一人のホステスが、「月末にイタリアへ行くんです。」という。すると、
「妻にフェラガモを買ってきてもらえないか。」
と一人の課長が頼みごとをし始めた。二人はどうやら元々知り合いのようだった。
「オサーン君は?彼女、頼んだら買ってきてくれるよ。」と、彼は財布を開けながらこっちをみる。
「何?その卑猥なカモ」と渾身の返しをしたが、
「ハハハ、イタリアの靴だよ。モノはいいんだよ。」
と完全にボケを殺される。しかし年末に買ったデイトナのせいでお金がない。でもたまには嫁にでもと思い、渋々1万円を出しかけた時、
「はい、とりあえず5万。足らなかったらまた連絡ちょうだい。」
と先制攻撃を受ける。
僕は即座に、出しかけた1万円をふところ深くしまい込む。
「そういえば、ウチの奴はフェラガモよりアキレスが好きって言ってたなぁ。アキレスオネダリ妻。」
と言い、窮地を脱したオサーンです。
本当は日曜・祝日に街へ出るのは苦手なのですが、年末に一緒に回った友達Sから連絡があった。以前も説明したが、昭和のフェロモンを出している男である。スニーカーをズックといい、タートルネックはとっくり、つい最近までGコード予約付ビデオデッキがリビングに置いてあった。
※Sのイメージ
S :「おい、ワシや。年も変わったし、そろそろ買えるやろ?ワシは青と黒のやっちゃで。イモなヤツはいらんぞ。梅田で待ち合わせな。」
オ :「お前、ウロチョロされたら面倒くさいし、ヨドバシカメラのマッサージチェアでも座って待ってろ。」
S :「お前にしてはええ提案や。そうするわ。」
自分の言いたいことだけ言って切る、Mr.自己中。でも仕方がないので2人で回ることとしました。
梅田に着くなり、まずはヨドバシカメラへ向かいます。ヤッパリ後悔する。一人の方が楽だ。なぜならマッサージチェアコーナーへ行くと、地響きのようなイビキが聞こえる。うるさい店内でも聞こえるイビキ、Sだ。このゴリラのよなイビキ野郎を起こして立ち退かせると、恐らく私はこの、マッサージチェアコーナーの救世主となる。
オ:「おい、キミ起きろ。営業妨害だよ、寝るところじゃないんだよ!」
チラチラ周りの視線を気にしつつ救世主はゴリラに悠然と立ち向かう。”やっと注意してくれる人が来た“という安堵の表情の店員。軽く会釈をし、もう一度言おうとしたとき、ゴリラは目を覚ます。
S :「おぉ、オサーン。ここ極楽や。お前も隣り使え。」
一瞬にして知り合いとバレ、周りの冷たい視線を一身に浴びる。ゴリラを従えた救世主は、足早に店を出る。
まずは心安らぐ美女集団、阪急うめだ店からスタートします。
その前にしっかりとクギを刺しておく。「お前は黙って後ろにいろ」と。しかし今回、お声を掛けた女性店員さんがオサーンの好みではなかった。もちろん目的のモデルもなかった。そこに敏感に反応するS。
「オレ、今みたいに冷たく『ありません』って言われたら、パチキかましたるわ。いつでも俺に言え。」
(注)パチキ=頭突き
地雷のようなヤツを連れながらの行動は、かなり疲れる。続いて大丸へ向かうが、あまりにもヒドいので東急ハンズで時間を潰してもらうことにする。その間に一人でロレックスに向かう。
探してるモデルを伝えると、あまりにも無表情で冷たくて、背筋が凍りつきそうに。良かった。ここに奴がいたら、何か厄介を起こしたに違いない。そそくさと東急ハンズへ彼を迎えに行き、「ヤッパリないって言ってた」と伝えると、「お前、人気ないなぁ。」というS。そうなのか、俺が人気ないのか・・・俺のせいなのか・・・
彼と地下鉄には乗りたくないので、タクシーで移動します。
しかしナンダカンダ言って昼になったので、腹ごしらえのためにラーメン屋へ行くことに。
しかし人が多くてごった返している。違う店に行こうとすると、Sが「任せとけ」と言い残し、
「おい、兄ちゃん。ワシや。ラーメン2つ先頼むわ。」
という。
「知り合いか?」
「いや、言うてみたら案外行けるんや、こんなんは、ガハハ。」
「あのな・・・」
そして再び向かいます。
ここと、
ここと、
ここへ行きまして、ある店舗で出会う。
出てきたプロフェッショナルモデル。シンプルなフェイスで人気があるエクスプローラーI。彼が求めているモデルは、GMTマスターII BLNR(バットマン)であることはわかっている。しかしシックなモデルなので納得して買うかも知れない。買ってもらって、さっさと帰ってもらいたい。彼の答えを待つ。
S:「だからお前、これちゃうわ。これやったらなんぼでも外並んどるやないかい!」
店:「いや、ショーケースには並んで・・・」
S:「あるやないかい。」
オ:「それ、デイトジャストやろ。これはエクスプローラーや。人気のモデルや。」
S:「一緒やないか!お前ら俺を騙そうとしとるな!」
オ:「もうええわ。GMTはないってさっきから言うてるやないか。」
S:「何か食いたい。」
オ:「何歳や・・・お前・・・」
店:「甘いもの大丈夫ですか?チョコレートなら・・・」
S:「金払うし、全部持ってきて。コーヒーと。」
オ:「厚かましいな・・・」
チョコレートが運ばれてくる。
S:「こりゃありがたい。糖尿なるわ。でも美味いわ。コーヒー、おかわりあるよね。頼むわ。」
そんな厚かましい奴に早く帰ってもらいたいのか、気に入ったのかは、わかりませんが、カタログを手に店員さんが入ってくる。
店:「こちらのお色はどうですか?」
オ:「青黒しか興味ないんですって、すいませんね。」
S:「何やこれ、チョコレートみたいな色しとるやんけ。渋いわ。こっちの方がええやん。お前、こんなんあるって何で言わんねん!これ出して。もうチョコいらんわ。歯、ウズくほど甘いわ。」
店:「ちょっと在庫があるか確認してきます・・・」
オ:「マヂか!?」
オ:「ウソやろ・・・そんなオレの欲しいのは一つも出してくれへんのに・・・。」
S:「人徳や。保証書、取りに来てまたチョコもらうわ。」
店:「はぁ・・・わかりました。」
S:「これ値段一緒か?え?156万?アホか!そんなんないわ。オサーン、立て替えてくれ、全額。」
オ:「は?何で全額やねん!マヂか?」
S:「これ欲しいねん、めちゃ。頼むわ。」
結局立て替えるハメに。
オ:「で、私はデイトナの・・・」
店:「ございません。」
そんなこんなで、GMTカフェオレをゲットして満足げなS。やっと店を出て、Sとは別れて一人でもう一店舗行こうとするが、付いてくるS。
オ:「どうした?」
S:「オレも行く。もう何も言わへん。」
オ:「勝手にしてくれ。」
そして最後のもう一店舗へ向かう。その間、Sは上機嫌で、
「みなさん、お元気ですか~?」
と言ってくる。おそらく昔やっていた井上陽水の日産のCMだ。似ていない上にモノマネが何せ古い。
店に入ると、
店:「何かお探しですか?」
S:「探しものは何ですか♪」
と井上陽水の似ていないマネをして歌うS。全然面白くもない。
オ:「デイトナのオイスターフレックスのWGなんですけど。」
店:「デイトナは全ての素材において人気でございまして、今はないですねぇ・・・」
S:「ないってさ、オサーン。それより僕と踊りませんか~、ウフッフ~♪」
店:「??」
オ:「お前、上機嫌やな。帰るわ・・・」
そんなこんなで、友達のSがバットマンではなくカフェオレを購入し、上機嫌になったことはロレックス好きの私にとっては、すごくうれしい出来事でした。しかし機嫌が良いのか、ずっと付いてくる。
S:「飯行くぞ。予約してあんねん。」
オ:「は?帰るぞ、俺。腹減ってへんし。」
S:「世話になってるし、今日ぐらい付き合え。」
今日ぐらいって、いつも付き合わされてばっかりだが、お言葉に甘えて早い晩ご飯を頂きました。
お会計が怖いぐらいの高級なお寿司でした。彼の給料ではかなりの背伸びだと思うが…彼は上機嫌で日本酒を飲んで、ず~っと時計を眺めている。
とても疲れたけれど、ひとつミッションをクリアできた1日でした。予定からして、しばらくパトロールへは行けそうもない。
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