日々是、思ふ 其の参拾陸

『日々是、思ふ』は、私、オサーンに起こった出来事を、ありのままに、時には大げさに伝えるコラムです。

今日、一人の女性職員が知らないうちに私の背後にいた。本当に気付かなかった。神に誓って気付かなかった。私は少し疲れたので座ったまま両腕を後ろへ反らし、ノビをする体制に入った。そのとき、そこにはその職員の胸があった。サンキュー。右手が当たった。

「キャアッ!」と言われ、私も驚いた。ワザとではない。何なら言えるものなら私も「キャァッ!」と言いたい。だって、知らなかったんだから。しかし絶対的不利な立場になるのは何故かこっち側だ。その職員は私に書類を持ってきたところだったらしいが、本人がそういうだけで実はコッソリと私の背後を取り、「もらった!」とチョークスリーパーかブルドッキングヘッドロックを放り込んでくるところだったかもしれない。それなのに、私がセクハラをしたような眼を数人の部下はしている。

「おい待て。みんながいるところではさすがにこんな大胆な犯行は起こさない。それぐらいわかるやろ?」

と、一番近くにいた男性職員に助けを求める。こいつは味方だ。しかし先日、寿司を奢ったにもかかわらずこの職員はこういう。

「ま、課長はそういうところもあるしなぁ・・・」

裏切られた。今、その冗談は全くの逆効果だ。しかも鬼スベリしている。俺の寿司返せ。去年の結婚祝いも返せ。

一応私は、「ごめんね」と一言彼女に添えて書類を受け取った。彼女も、「びっくりしましたが、全然大丈夫ですよ。」という。これで話は終わりのはずだ。取り合えず書類を受け取り仕事に取りかかろうとした時、いつも私の時計にあだ名を付ける部下が遠くの席からやってきた。嫌な予感がする。

「みんなここで見てたからって、セクハラと決めつけたらあかん。剣道だって、至近距離で審判がじ~っと見てて、一人の審判が『面アリ!』と旗を揚げても、主審が二本の旗を水平に振って『不十分』と叫ぶような時もある。柔道だってそう。審判ですら、ジャッジが二分することがある。だから、簡単にそういう目で課長をみたらあかん。」

静まった水面に大の字で飛び込むが如く、事を大きくしてくれる。バカかこいつは。

「俺はさっきの課長は『不十分』でセーフやと思っている。故意なら課長、ガッツリ両手で行くはずやし、アハハ!」と、こっちを見てあたかも「フォローしておきましたよ」と言わんばかり、得意げに軽く “うなずき” を見せて自分の席に戻っていった。神様、こいつに天罰を下してください。

しばらくすると、隣の課から同期(一応、部下になる)が何やら聞きつけて嬉しそうにやってきた。

「そういえばこの前ニュースで、『現役のメスの競走馬がレース前日に仔馬を生んだ』ってのがあったわ。同じ競馬でもサラブレッドと違って、北海道のばんえい競馬の “ばん馬” やけどな。」と、どうでもいいニュースを披露する。

「馬でも誰にも気付かれずにそういう行為をするのに、お前はヘタやなぁ(笑)」と彼も言い残す。

こいつにも天罰を。