日々是、思ふ 其の参拾参
「日々是、思ふ」は、オサーンが普段の生活で感じたことを、誇張して表現する場です。
少し変わった友達っているもので、ご多分に漏れず私にも数名いる。そのうちの一人は、極端に人と同じ物を嫌い、”流行り” が大嫌いという。
例えて言うなら、私の世代(昭和40年代後半〜50年代前半)の人達のほとんどが、「ドラゴンボール」を観ていた謂わば、 “ドラゴンボール世代” と言ってもいい。しかし彼にとって、この “ドラゴンボール世代” という呼び名は許し難いという。実はこの理由が先日、約35年の時を経て暴露された。
我々が小学生から中学生になる頃、彼がドラゴンボールを観ていないことを知っていた。なので彼の前では意識的に話題にしなかった。
ある日、当時の人気TVドラマ “パパはニュースキャスター” の話題で学校で盛り上がった。
その内容はともかく、その彼は「もうその話はええ。他のことして遊ぼう。」と言った。私は「何や?お前観てへんのか?」というやいなや、彼に殴られ、喧嘩に発展した。
そんな彼と数年ぶりに会い、当時のそんな話をすると彼がその理由を吐露した。
「当時、ウチにはテレビがなく、漫画は親父が散髪屋からもらってくる(パクってくる)月刊少年マガジンしか読めなかった。近くの本屋も家族総出で立ち読みし、それが見つかり一家出禁になってたんや。」
と悲しい過去を語ってくれた。そう、彼の中では我々は “ドラゴンボール世代” ではない。彼曰く、
「俺の中では、俺らは “鉄拳チンミ世代” なんや。」
という。ドラゴンボールでお馴染みの “天下一武道会” なんてのは邪道。本当の王者を決めるのは鉄拳チンミで行われる “天覧武道会” というのがあるらしく、もしかするとドラゴンボールは鉄拳チンミのパクリかも知れない、とまで言っていた。
家庭環境だけではないにしろ、彼にとってはつらい子供時代だったのかと思う。私も決して裕福ではなく、どちらかというと欲しいモノを買ってもらえなかった家庭だ。
最後にそんな彼が私に聞いてきた。
「そういえばお前、時計に詳しいんやろ?ヤフオクで見たんやけど、こんな時計ってどうなん?」
という。明らかな代物だ。
「お前が欲しいかどうかが問題であって、俺がどう思おうが関係ない。俺に『欲しいか?』ってきかれたら、『全く欲しくない』けど、どんな奴が買うのか興味がある。」
と答えた。もしかすれば彼は、その時代時代の流行りを、誰よりも意識しつづけて生きてきたのかも知れない。それを感じて、
「今度一緒に時計屋に行こうか、興味あるんやったら。」
と誘ってみた。すると彼は、今まで見たことのないような笑顔でこう言った。
「お、おう。お前の時計、恰好いいな。」
30年以上付き合ってきて、こんな素直な彼を見たのは初めてだった。そして僕のスカイドゥエラーを着けて喜んでいる。ロレックスってやっぱり偉大なのかも。
“鉄拳チンミ世代” から、ロレックス好きが一人増えるかも知れない。
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