日々是れ、思ふ 其の拾壱
「日々是、思ふ」は、オサーンがちょっと時計とは関係ないこと(時には関係あること)、思ったことを綴る時事的コラムです。社会派ハードボイルドとでも言うべきか。100人に1人でも共感してもらえれば本望です。
基本、「オサーンの愚痴の掃き溜め」である。
私はできる限り、何かが起こった時に「自分ならどうする?」と自分に置き換える。他の人はどう思うかわからないが、私は人生においてこの思考は大変重要だと思っている。こうすることによって、批判的な意見の人の気持ちも、(何とか色々と解釈して)ある程度理解して許すことができるようになっている。
先日見たニュースでの話。詳細はリンク先を参照してもらいたいがニュースタイトルは、
「盗まれた車が事故 責任は持ち主に? 最高裁が判断へ」(朝日新聞)
である。ざっと内容を見るとこういった順序である。
- 金属精錬会社(所有者)の独身寮に止めてあったワゴン車が盗まれる
- 盗んだ犯人がその車で居眠り運転し、多重事故を起こす
- 事故に巻き込まれた他車とその巻き込まれた車の加入している保険会社が、所有者を提訴する
- 一審東京地裁「管理の過失が事故を招いたとは言えない」として精錬会社に責任はないと判断
- 二審東京高裁「自動車盗、居眠り運転、事故という一連の流れを予想できた」と認定。精錬会社に総額約790万円の賠償を命じる
- 最高裁へ上告(現在進行中)
となっている。どう思いますか?
一見、「何で盗まれた人が訴えられて、金をむしり取られるのか!」と憤慨してしまう内容である。確かにそうだ。私が盗まれた当事者なら、納得がいかない。何も悪いことはしてないのに、である。
しかしこの二審判決は、道交法での過失を大きく取り入れている。実は道交法第七十一条にはこうある。
「自動車又は原動機付自転車を離れるときは、その車両の装置に応じ、その車両が他人に無断で運転されることがないようにするため必要な措置を講ずること。」
ここに重大な過失があったというのだ。今回、盗難にあった車は「誰でも入れる敷地に無施錠で、サンバイザーに鍵を挟んでいた」らしい。ちなみに「適切な管理を行っていない」とは、
「エンジンをかけた状態やキーを付けっぱなしにした状態、ドアロックをしていない状態で、第三者が容易に接触可能な場所に車を停めていたり、長時間車から離れていたりといった場合、及び盗難されたのにも関わらず長期間被害届を出していない」
などの状態をいう。しかしこの法律では、反則金が6000円となっている。ここに矛盾を感じる。二審判決は、
「管理不十分」→「窃盗犯の居眠り運転」その結果「事故」
を一括りとして「予測できる」とまで言っている。いくらなんでも、これは予測できないのではないか。管理不十分から居眠り運転は厳しい。あまりにも結び付け方が飛躍しているように感じる。
では一体なぜ、このような判決を出したのか?こんな小学生でも理不尽だと感じる判決には何か”違う理由“があるのではないか。そう感じた。
=ここから仮説=
「①もし自分が巻き込まれた車側、②その保険会社側だったらどうして欲しいか」
①巻き込まれた車の全額修理費用負担
②支払った保険金を相手(誰か)に請求
となる。客観的に判断して、この “盗んで事故を起こしたバカ” に請求したところで支払能力がないと判断したに違いない。絶対に調査はしているはずで、「実は結構な資産家」ということはなかったのだろう。
となると、矛先は所有者しかない。一見、何の落ち度も無いように思うが、先ほどの道交法を取り上げて、管理義務違反を理由に請求する。この道しかないと判断したのだろう。
さて、この東京高裁の裁判長も当然、保険金の支払い基準のようなことを知っているに違いない。ということは、被害を最小限に済まそうとする折衷案だったのかも知れないと思った。私が裁判長なら、「所有者を守ってあげたいが、事故被害者も何とか救いたい。盗んだバカは、それなりに刑罰を喰らわしたい。」そう思う。多くの人もそう思うと願いたい。
実は自動車保険の支払いには、「何か過失があった時に支払う」という基本前提がある。自分の過失で物損事故を起こしても、保険で対処したりする。自分の落ち度を保険がカバーするのだ。ということは、裏を返せば「過失のない場合は保険対応できない」と言える。
適切な管理がされていた車が盗難にあい、その車で事故が発生した。この場合は、この車の所有者に何の落ち度もない。従って、本来の所有者に損害賠償責任がない以上、保険会社は人身・物損ともに支払いは行わない。仮に、車両保険に入っていれば、盗難車の補償を受けることは可能である。
しかし適切な管理ではない状態だった場合、本来の所有者にも過失があり損害賠償請求の対象となる。ということは、対人では自賠責と任意保険の補償対象となり、物損も対象となる。
これを頭に入れた判決だったのではないだろうか。もちろん所有者の保険を使うということで、所有者が納得できないかもしれないが、所有者の過失を認めることによって、所有者の保険で事故に巻き込まれた側の補償ができ、所有者は賠償金を自身の保険会社にお任せできる上、車両保険に入っていれば車は戻ってくる。少なくとも、多額の賠償金を自腹で払うことはない。
しかしこの車の所有者側は納得できずに上告していますが、最高裁の判決はどうなるのでしょうか。
一見バカげた高裁判決に見えるが、実は人間味ある判決だったのかも知れない。あくまで勝手な想像ですが、少し立ち止まって物事を考えてみるのも大事なことかもしれません。
瀬戸内寂聴の後釜狙ってます。
どうでもいいけど、バトロール行きたいなぁ・・・
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