日々是、思ふ 其の伍

日々是、思ふ」は、オサーンがちょっと時計とは関係ないこと(時には関係あること)、思ったことを綴る時事的コラムです。社会派ハードボイルドとでも言うべきか。100人に1人でも共感してもらえれば本望です。
基本、「オサーンの愚痴の掃き溜め」である。

 

静観しておこうと思ったが、少し触れてみる。そう、話題の「人気ステンレススポーツモデルの購入制限」についてだ。結局、需要と供給のバランスが大きく崩れ、本来ブランドの目的とする”時計“としてではなく、”儲けの財“とみなす転売屋や、人気モデルを毎日求める「ランナー」と呼ばれる客の対策に踏み込んだ形なのかも知れない。真意はわからない。私自身は、どうでもいいと思っている。

しかしどうも解せないのが、

正規店店員が、毎日来るランナーに困っている」や、「転売目的で購入される店は困っている」などと他が騒ぎ立てることだ。これを”迷惑行為“と言っている人もいる。御多分に漏れず、こう言っている人達も、毎日ではないにしろ正規店に行っている人が多い。はた目にはランナーと何もかわらない。しかし一括りに”迷惑行為“という言動こそが、”迷惑行為“にも感じるし、視野と度量の狭さを感じる。

確かに道徳的な部分は必要だと思う。「なぜ俺には売ってくれない」、「裏にあるはずだ」などと店員に迫るような言動、特定の店舗に張り付いて入荷状況をストーキングするような行為などは、”迷惑行為“なのだろう。

でも欲しい商品を探して毎日通うこと自体に、なぜそれほど嫌悪感を抱かれないといけないのか。正直、ノートPC開いて何時間もスタバに居座ったり、マクドナルドでたむろする女子高校生の方がよっぽど私にとっては迷惑だ。タピオカミルクティーを買うのに歩道に並ばれる方が迷惑だ。少なくとも、「ランナーがいるからロレックスに入店できなかった」、なんて経験は一度もしたことがない。飲食店に長時間居座っている客のせいで、座席が確保できずに仕方なく出ていったことは何度もある。

ロレックスの店員さんが困っているという話が出ている。でもそれは、人気ショップに様々な人が来るのは想像に難くないと思うんだが、それは想像以上ってことだったのか。客商売で客に来られて困るってのも、本末転倒だ。少なくともランナーは、欲しい商品があれば買う”“である。

迷惑なんて、みんな生きてりゃかけるよ。

  1. 迷惑だと分かっているが、してしまう行為(故意)
  2. 迷惑だと思っていないが、結果迷惑だった行為(過失)

大きく分けて2つあり、「」は生きていると必ず付きまとっていますし、私も含めてみなさんもしてきていると思います。問題は「」なんです。この迷惑だと分かっていてもする行為も、結局は、「度合」だと思います。犯罪行為や道徳的に許されない行為は問答無用ですが、そこに”迷惑の秤“なんてないんです。「迷惑かも・・・」と思っていても、ケースバイケースでそうでない場合があります。大事なことは、「自分もそうだし、他人も許そう」という大きな器だと思います。

 

以前、私が患った”トリコモナス症“という感染症の体験談。

それは独身の時、当時付き合っていた彼女から「うつしたかもしれない」と言われた。この感染症は、男性には症状らしい症状がない。気付かない。しかしとにかく病院へ行けというのだ。

性病じゃなくて、原生虫っていうの。性病じゃない!小さな虫なの!

そう言われた私は、頭にきた。

虫、虫っていうけど、お前は虫博士か!虫だったら良いのか?虫だから上品なのか?昆虫採集できるんか?

とまくし立てたが、この彼女も、結局はどこかの虫男からうつされた被害者なのだ。

ある秋の夜、泌尿器科へ行った。待合室には数名いる。みんな携帯(当時はスマホがなかった)をイジったり雑誌を読んでいる。

お前らと違い俺は性病じゃない

ここだけははっきりと線引きをしておきたかった。

いいか、一緒にするなよ。俺は寄生虫だ。ただの虫だ。しかも、いるかどうかもわからない。いや、いないと思う。何となく腫れているのも、触り過ぎなだけかもしれない。多分気のせいだ。いいか、一緒にしないでくれよ。おれは虫なんだ。性病じゃないんだ。お前らと友達でもないからな!

しばらくして呼ばれて中に入ると、

あぁ、トリコモナスですね。特に症状も主立ってないでしょ?薬出しときますよ。

 

こんな20年以上前のことを思い出した。

性病と俺の虫とは違うんだ!」

若かりし頃の私は強く思った。だから、

ランナーと俺とは違うんだ

はた目には同じだが、そう思って正規店に行っている人、そして日々通うランナー。新たなルールができたのだから、少し器を広げて受け止めてもいいのではないだろうか。