ロレックスを買いたい僕が “壁” を感じた時

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「ヨシッ、今日はマラソンするぞ!」

そんな気合いとカツを自分に入れ、一日かけて街を歩く。月に数回、そんな日があり、狙っていた時計が買える機会が数回に1回の周期で訪れていた。買いたい一心でいっぱい話のネタを考え、店員さんと仲良くなって買えることがほとんどだった。一生懸命という言葉が当てはまる。そう、僕は一生懸命だったのだ。

その熱意だけでこれまで買ってきたのだから、自分でもスゴイと思っている部分もあるが、これはつまり、僕は勉強して80点を取った学生と例えられる。しかし世の中、僕のように勤勉で頑張り屋の80点ゲッターと、遊んでいて80点を取る人間が存在し、どっちが優秀かということを考える。鉄1トンと綿1トンはどっちが重いかと言い換えることもできる。

つまり何が言いたいかというと、遊んで80点を取る人間は、さらに寝ていて80点を取る人間が現れたときに焦る。鉄1トンは金1トンが現れた時に、打ちのめされるという構図だ。そこまで深い人間性が、現在のロレックスを買い求めるバトルでは問われているということである。綿1トンの僕は、金1トンの重量(目的)は同じでも、その社会的価値の違いに “壁” があると感じたのだ。

そんな “綿1トン” の僕(助手席)と僕よりももっと時計に詳しい “綿1トン” の友達(運転)と、「やっぱ、デイトナはステンレスなんや」とか「青サブこそが、スポロレや」などと分かったようなことをつぶやきながら晩御飯を食べるためにドライブしていたら、雲一つない綺麗な夜空の日に赤い稲妻が光った。「うわ、UFOちゃうん?」という運転する綿1トンに助手席の綿1トンが「アホ、アレはアレや」と、オービスの名が思い出せない。その後合計綿2トンが一瞬、無言になった。

3週間後、しっかりと警察に呼び出された友達。警察ではオービス写真にバカ丸出しで口を開けて運転する友達と、鼻クソをほじくっているように見える僕が写っている写真を見せられ、「はい、間違いありません」と蚊の鳴くような声を出して、罰金7万円近くを支払ったという。ロレックスが買えなくなっただけではなく、無事故・無違反のゴールド免許者の彼はその純潔免許まで失い、綿からホコリ1トンへと成り下がった。

壁はますます分厚く高い。

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