年齢を重ね、気温も低くなってくるとトイレが近くなる。自分では意識していなかったが、職場でもよくトイレへ行っているようで、30分に1回ぐらいの割合でトイレへ行く僕のことを “サーティーワン” と若い連中らに陰で呼ばれているオサーンです。
11月のある日、出張先で最終日の時間が空いているのを見計らってロレックスへ行った。いわゆる “マラソン” というやつだ。僕の2024年のロレックスマラソンは例年にないほど機会が少ないが、例年にないほど高確率で購入できている。自分でも驚くほどである。それが今回は仇となった。
マラソンの調子の良さから今回も簡単に買えると高を括っていた僕は、アッサリと敗れ去った。感覚としては、「かすりもしなかった」といったところだ。購入時とは違う、あの、なんだか冷ややかな断りをいれる時の店員の目、そして敗れ去り店を後にする初老の男性(オサーン)。僕は心のよりどころを求めた。簡単にいえば、
チヤホヤして欲しかった!
ということで、こうなれば選択肢は2つ。ラグジュアリーなお店で “おもてなし” を受けるか、夜の店でマッサージ的な “おもてなし” を受けるかだ。世の中の人はこの2択に毎回迫られているはずだ。
僕はと言えば、この日に出張から帰らないといけないで新幹線のチケットも取っている。夜のお店の選択肢はない。となれば、ラグジュアリーなお店へ入って、
「あら素敵なお客様、すごくこのバッグがお似合いですよ!スリスリ❤」
としてもらい、いい気分になって何も買わずに帰路に着きたい。そう思った僕は近くにあったルイ・ヴィトンに入った。正直、僕はルイ・ヴィトンの商品ラインナップについては無知である。昨年リリースされた人気のタンブールという時計については詳しいが、それ以外は時計を入れる “コフレ 8モントル” というトランク型ウォッチケースがいつかは欲しいと思う程度だ。しかし100万円オーバーというウォッチケースは、僕には程遠い品である。
店に入ると、ベテラン感のある女性店員さんが対応してくれた。カードケースや財布などを見ながら新幹線までの時間を潰す。そして時計が好きで、タンブールの素晴らしさやウォッチケースの話をした。その間、他の店員さんもなぜか僕の元に何人か来て下さり、絵に描いたようなチヤホヤを味わった。
あ~気持ちいい。ロレックスでは味わえないこのチヤホヤ感。
もちろん勧められたウォッチケースは、
「いや、僕にそんなの買えるほど甲斐性はないっす、ヘヘヘ」
なんて言いながらセールストークは上手くかいくぐった。
そんな時、
「あ、そういえば京都でルイ・ヴィトンの招待制イベントを開催予定でして、キャンセル待ちにはなりますがいかがですか?今回は、普段見ることのできないルイ・ヴィトンの家具なんです!是非、お申込みください!」
と猛プッシュされた。以前、時計のイベントへ行ったことがある。このようなイベントは、一通り見た後にその客の好みに合うような商品を最後に出して、セールストークがある。それは心を鬼にしてキッパリと断ればよい。
イベントの予約状況を聞くと今のところ、2人ほどキャンセルがあれば繰り上がりになるという。まぁどうせ、申し込みすればキャンセルなど関係なしに行けるだろうとは思っていたが、チヤホヤしてくれた店員さんも京都へ行きたいというので、気持ちよく「オッケー!」と伝え、駅前のイルミネーションを少し楽しんだ後、気分良く出張からの帰路に着くことができた。
すると早速、ルイ・ヴィトンの店員さんから来店、並びにイベント参加予約のお礼のショートメッセージが届いた。そこには、「キャンセルが出て、また僕と京都でお会いできれば嬉しゅうございます」、という内容も書かれていた。
そしてその翌日、またもやショートメッセージが来た。
でしょーね!
いや、これは想定内である。ルイ・ヴィトンのチヤホヤは続く。嫌いじゃない、そのチヤホヤ継続は嫌いじゃないよ、ルイ・ヴィトン。元々、家具は普段買うことはないが見るのは好きなジャンル、しかも今まで見たこともないルイ・ヴィトンの家具となると、興味はある。
そして間もなく、招待状も届いた。気が付けば僕自身、このイベントを凄く楽しみにしていると感じた。そしてイベント当日を迎えた。
つづく
コメント