時計とは関係のない話 1

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その名の通り、時計とは全く関係のない話です。

先日、友人数人とご飯を食べることになった。古くからの知り合いであり、職業も様々。左官屋・公務員・中小企業営業マン・ショップ店員・弁護士などなど。アルコールをそれぞれ飲み、昔話に花が咲いた。この場では、それぞれの立場など関係はない。

しかし普段は大人しいのに、アルコールを飲むと、物事をズケズケというようになる人間がこの中にいる。アルコールの良いところであり、嫌なところでもある。このメンバーの中で、左官屋の友達と僕は、アルコールがなくても普段から言いたいことをいうタイプだ。1時間が過ぎたころ、元ユーチューバーで元参議院議員のガーシー氏の話題になった。保釈金を支払って拘置所から出てきたという話になり、「保釈金って基本的に返ってくるんやね?」と僕が弁護士の友達に聞いた時、普段は大人しい友達が急にキレた。「こんなクズは懲役刑でも食らわせて、しっかりと罪を償わす必要がある!なんで保釈金が返ってくるねん!」と。

いや、まだ裁判にもなっていない段階だし、簡単にいうと起訴後の裁判までの間、逃亡などをさせないための保証金としてある制度なので、基本的には裁判がしっかりと終われば、支払った保釈金は返ってくるという説明をした。確かに起訴や裁判についての知識については普通馴染みがなく、”なんとなく知っている” 程度のことだと思う。弁護士が逮捕から拘留、起訴、裁判、判決など順を追って説明したことに対し、怒れる友は自分の無知に納得しつつ、しかし怒りは収まらず、今度は弁護士という職業に食いついてきた。

「お前ら、罪人の味方やろ。結局お前らも悪人や!」

その言葉に反応したのが左官屋の友達。口の締まりが悪く、ヨダレをすすりながらこの意見に賛同してきた。

「ジュルッ! せやねん、ええこと言う。弁護士は悪人の罪を軽くする。それはアカン!ジュルッ!」

僕は弁護士の仕事は刑事裁判で弁護するだけではなく、民事の解決や法律相談など内容も多岐に渡ることを説明。しかし中立的な立場をとっていた僕だが、確かに刑事裁判での弁護士は、被告人を弁護する仕事なのでそれについては上手く言えなかった。少し悲しげな表情の弁護士の友はこういった。

「確かにそう言われることが少なからずあるので、刑事事件を続ける弁護士は多くない。」という。しかし刑事事件の被告人の弁護が悪なら、なぜ憲法や法律で今まで弁護士を付けることが保障されているのか、ということが大事だという。

刑事弁護は適正手続きを実現するための活動で、悪いことをした人であっても、憲法や法律に従って正しく裁かれないといけない。しかし問題は、事件が大きいほどマスメディアの煽り報道が過熱し、重い判決を期待する。このような状態でも弁護士がいないとなると、強い世論や偏向報道の影響で、「判決マシマシ」が起こりかねない。なぜなら、捜査機関も人間なら裁判所も人間だ。警察や検察は正義感があるが上、取り調べが行き過ぎる可能性もある。それでも裁判官が公正公平に裁いてくれればいいのだが、その材料に偏りがあれば公正公平は担保されない。その為に、適正な取調べがされているかのチェック機能も必要で、それがないと捜査機関の暴走が起こる可能性もある。悪い人でも検察とは反対側から意見を述べ、最後の砦である裁判官の客観的でフェアな結論を目指しているものであって、被告人の量刑を軽くしようとしているわけではない。

と、弁護士の友は熱く語った。全ての弁護士が同じ目線で刑事事件に携わっているとは思わないが、そんな言葉を友から聞けて嬉しかった。

だから、この弁護士の友達と高校の修学旅行で女風呂を覗きに行った話は、その場では言わないでおいた。

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