映画っちゅうのは、観終わった後に「ああ、おもろかったな」で終わらせてええもんやけど、粗探しライターを自称する者としては、そうはいかへん。
マックス・バーバコウ監督のアンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオーティが繰り広げるこのタイムループ・ラブコメ『パーム・スプリングス』。確かに2020年の自粛期間中にみんなが感じてた「毎日同じことの繰り返しやんけ……」っていう閉塞感にぶっ刺さる、最高におしゃれで切ない名作。

しかーし!
後半から急に「それっぽい物理の話」を持ち出してきて、観客を煙に巻こうとしとる!「なんか難しい理科の言葉」を並べてごまかされとるけど、私の目は節穴やない。今回は、この映画が抱える「筋の通らんところ」を、映画への熱い愛をこれでもかと込めつつ、徹底的にツッコんでいく。
【あらすじ】まずはどんな映画かおさらい
まずは「この映画観てへんわ」っていう人のためにも、超ざっくりあらすじを説明しておく。
舞台はアメリカの砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスで行われる、とある結婚式。 主人公のテキトー男・ナイルズは、すでに何十年も「11月9日の結婚式当日」を繰り返す、謎の「時間のループ」に閉じ込められている。

ある夜、新婦の姉であるサラが、ひょんなことから砂漠の怪しい洞窟に入ってしまい、彼女も同じループに巻き込まれてまう。 毎日が朝起きたらリセットされる地獄!最初は絶望して車に突っ込んだり暴れまわるサラやけど、やがてナイルズと意気投合して、どうせ朝起きたらまた11月9日やし、後先考えずにハチャメチャに遊ぶようになる。

でも、「一生このままでええの?」と悩むサラは、ついにループから抜け出すために狂ったように物理の勉強を始める。そして、とんでもない脱出計画を思いつくわけやけど……?
【登場人物】クセが強すぎるループ仲間たち
この記事を読む前に、まずはこのタイムループ地獄に閉じ込められた、クセの強すぎるメンバーをチェック!
役者は揃った。ここからが本番、「重箱の隅つつきツッコミ」のスタート!
第1章:山羊は消えてナイルズは残る?時空のえこひいき問題
まず、この映画の最大にして最悪の「それ、おかしくない!?」ポイントは、脱出実験に使われた「山羊(ヤギ)」と、エンドクレジット後の「ナイルズ」の存在のズレ。

サラは、爆発の力を借りてループから脱出できるという仮説を立て、近所のスバッドさんが飼っとるヤギを使って実験を行った。ヤギの体に爆弾を巻き付けて、洞窟の中でドカンと爆破したわけ。その結果、翌日のループでヤギがいつもの場所から消えていたことから、サラは「脱出成功や!」と確信する。
ここまではええ。問題はラスト。
サラの立てた仮説は、「爆発のエネルギーで、自分たちを閉じ込めているエネルギーの箱をぶち破る」というもの。 もしヤギが消えたのが「脱出に成功して、ループという世界からヤギそのものが消えた」からやとしたら、ナイルズとサラが脱出した後も、ループの世界からは二人が消えてへんとおかしい。
それやのに、エンドクレジット後、ロイの前に「記憶を失った、ループを体験していないまっさらなナイルズ」が呑気にスーツ着て現れる。
ちょっと待て!
ヤギが消えたなら、ナイルズも消えるべき!なんでヤギは消えて、ナイルズは「コピー」が残っとんねん。
これ、うどん屋できつねうどん注文して、うどんだけ残ってトッピングの「きつね(ヤギ)」だけがパラレルワールドに消えたようなもん。そんなおかしな話はない。
もし「爆破された本人は脱出し、その抜け殻としてのコピーがループに残る」システムなんやとしたら、サラが見た「ヤギが消えた」という実験結果は、単にヤギがどっか別の場所に逃げ出してたのを見落としただけか、あるいはナイルズを説得するために嘘をついたとしか思えへん。時空が主役にだけえこひいきしとるとしか思えんツッコミポイント。
第2章:サラの「超ガリ勉」物理学習プランの非現実性
次にツッコミたいのは、サラが物理学をマスターするプロセス。彼女はナイルズと喧嘩して姿を消した数ヶ月、あるいは数年の間、毎日ダイナー(アメリカのファミレスみたいなところ)に通い詰めて、物理の超難しい理論を勉強したことになっとる。

いや、言うのは簡単やけど、物理の博士号を取るのに、普通は何年かかると思ってんねん。しかも、この映画のループには「一晩経ったら物質が全部元に戻る」という超めんどくさいルールがある。
- 勉強ノートが消える: 毎日、サラが必死に書いたノートも、教科書に貼った付箋も、翌朝には全部リセットされて真っ白に戻る。
- ネットの履歴も消える: 毎日が11月9日の朝に戻るから、昨日調べた便利なサイトのブックマークも消える。毎日同じ検索ワードをググることから始めなあかん。
- 教えてくれる先生も忘れる:サラはパソコンで専門家とビデオ通話して議論しとるけど、その相手は次の日にはサラのことを1ミリも覚えとらん。毎日「初めまして、私は時間のループに閉じ込められた者ですが」と自己紹介して、怪しまれながら教えてもらうところからスタート。
これ、普通の高校生やったら3日で不登校になるレベルの鬼畜仕様。サラがどれほど天才でも、記憶力だけで教科書数冊分の知識をキープし、毎日ゼロから勉強をやり直すなんて絶対にムリ。ナイルズは40年以上もおったのに何も解明できんかったのに、サラがたかだか数年でマスターしたんやとしたら、彼女はアインシュタインの生まれ変わりか、それとも映画の脚本家が「勉強してるシーンをカッコよく流しとけば、観客は納得するやろ」と舐めとるかのどっちか。
第3章:時間のループの切れ目と3.2秒の魔法
サラがたどり着いた脱出作戦。それは、アインシュタインの理論にも出てくるような「時間と空間が歪む境界線(映画の中ではコシー地平線って難しい言葉で呼んでたかな?)」を利用する方法。

サラの説明によれば、ループがリセットされる瞬間には「3.2秒」という、ほんの一瞬だけ「時間の切れ目」ができるらしい。その瞬間に爆発のエネルギーをぶつければ、ループという「エネルギーの箱」をぶち破って元の世界に戻れるっていう理屈。
物理かじった友達に聞いたんやけど、高校の物理っぽく数式にするなら、脱出に必要なエネルギー $E_{escape}$ はこんな感じ。
$$E_{escape}>E_{loop}+T$$
(ここで $E_{loop}$ はループの壁の強さ、 $T$ は3.2秒の瞬間の時間) 。
いやいや、その「3.2秒」って数字はどこから計算したんや!?毎日同じ時間を過ごしとるからストップウォッチで手動で計ったんか?おまけに、脱出するために自分の体に爆弾(C4爆薬)を巻き付けて、自分のすぐそばで爆破させる。普通なら、時間の切れ目に飛び込む前に、肉体が木っ端微塵になって終わり。もしタイミングが1秒でもズレたらただの悲惨な自爆。そんな一瞬のチャンスに命を賭けるなんて、高校のテストでマークシートを全部勘で塗って100点狙うより無謀やろ!
第4章:ナイルズの40年間の記憶、スカスカすぎひんか?
ナイルズという男、設定では40年以上もタイムループに囚われとったことになってる。 40年て? 高校生が還暦間近のおじいちゃんになるくらいの途方もない歳月や。それやのに、ナイルズの頭の中は驚くほどスカスカなんや。

40年も同じ日を繰り返して、何万回も同じ人間に会い、同じ会話を聞き続けてきたら、普通はもっと悟りを開くか、あるいは完全に頭がおかしくなってるはずやろ。ナイルズが40年かけてやったことと言えば、ダーツを百発百中で当てられるようになったことと、結婚式の参列者の不倫を観察することくらい。
お前、もっと他にやることあったやろ!世界中の言語をマスターするとか、ピアノをプロ並みに弾けるようになるとかできたはずや。それやのに「俺、昔の仕事すら思い出されへんねん」って、記憶の容量がフロッピーディスク並みか! 彼がサラに恋をするプロセスも、40年の重みを考えたらあまりにも軽すぎる。定年退職したおっちゃんが、昨日今日入ってきた新入社員の女の子にデレデレしとるような違和感がある。
第5章:おばあちゃん(ナナ)最強説と「置いてけぼり」の罪
この映画で一番不気味でツッコミたいのが、新婦のおばあちゃん、ナナ。彼女、絶対にループのことを知っとるよな?

ナナは、ナイルズのスピーチに対して「今まで聞いた中で最高の出来やったわ」と声をかける。まるで、過去の何千回ものスピーチと比較しているような口ぶり。さらに、サラが脱出を決意した日の夜、「あなたももう行くのね。がんばりや」と声をかける。これは明らかに「ループからの脱出」を知っとるセリフやろ。
ここで問題なのは、主人公たちの薄情さ。サラはあんなに必死に勉強して脱出方法を見つけたのに、なんでおばあちゃんに「脱出方法見つけたで!」って言わへんかったんや? 自分たちだけさっさと爆死して脱出して、後にはまだループに囚われとる(かもしれない)お年寄りを残していく。この主人公たちの自己中さは、かなりひどい。
第6章:恐竜という幻覚の「実体化」問題
映画の途中で二人が見るブラキオサウルス(あの首の長い巨大な恐竜)。最初に出てきた時は、お互い怪しいキノコを食べてハイになってたから「薬による幻覚」やと思ってた。
ところがラストシーン、ループを無事に脱出して次の日(11月10日)を迎えた二人の背景に、しれっとその恐竜が砂漠を歩いとる!
ちょっと待て! 二人が戻った世界って、まさかの「恐竜が絶滅しなかったパラレルワールド」なんか!? パーム・スプリングスの砂漠にあんな巨大な爬虫類がうろうろしとったら、州兵が出動してF-35戦闘機で爆撃されるレベルの国家的大事件。それをプールの浮き輪の上でビール飲みながら眺めとる二人……。「不可能が可能になった感動の瞬間」を映像にしたかったんやろうけど、恐竜まで出されたら、こっちは「サラ、物理の計算間違えて変な世界にワープしたんちゃうか?」って、彼女の勉強不足を疑わざるを得ん。
第7章:ロイの復讐と、あまりにも不確かな「救済」
J・K・シモンズ演じるロイについても言いたい。 彼はナイルズにハメられてループに入れられ、愛する子供たちの成長を見られないことに絶望してナイルズを狩り続けるようになった。

ロイは最終的に、サラからのボイスメールを受け取って式場に現れ、記憶のないナイルズを見て脱出計画が本物やったと確信する。
けど、ロイがこの後どうするか考えてみてほしい。彼はサラの言った通りに自分に爆弾を巻き付けて、洞窟で自爆せなあかんわけ。もし失敗したらただの悲惨な事故。家族を愛する男が、そんな大ギャンブルに乗るのか?しかも、ロイが脱出した後の世界でも、また「記憶のないロイ」がループ内に取り残されるかも。ナイルズの例を見る限りそうなりそうやけど、そうなるとロイの脱出は何を意味するんや。ロイの魂だけが元の世界に戻って、ループ内には「家族と過ごす幸せなループを続けるロイのコピー」が残る……。これ、どっちが幸せなんやろうか。
第8章:記憶と身体のリセットに関する深刻な矛盾
最後に、この映画の根底を揺るがす「リセットの法則」について。この映画では「記憶は残るけど、肉体は毎朝リセットされる」というルールがある。 ナイルズやロイは、何度も死んどる。矢で射抜かれ、車で轢かれ、爆発し……。しかし、翌朝には傷一つない状態で目覚める。

それなら聞くけど、そもそも脳みその構造はどうなっとんねん。
人間の「記憶」っていうのは、脳の中の神経細胞のつながりが変わることで保存される「物理的な変化」。
もし肉体がリセットされて11月9日の朝の体に戻るんやとしたら、脳の中の物理的な構造も戻らなあかん。
つまり、朝起きたら記憶も全部消えてるはずや!
記憶だけが「魂」みたいな非物質的なものとして残って、身体だけがリセットされるなんて、もはや物理学やなくて「オカルト」。サラちゃんがいくら難しい教科書を読んだところで、お化けの仕業を数式で解こうとしとるようなもん。
結論:綻びだらけの時空で見つけた、歪な「愛」
この映画『パーム・スプリングス』は、筋の通らんことだらけ。
ヤギの消失、サラの天才化、ナナの沈黙、恐竜の闊歩、そして脳みそリセットのガバガバな定義。プロの粗探し屋からすれば、この脚本はまるで、穴の空いたレンコンでダムを作ろうとしとるような危うさがある。
けど、不思議なことに、このツッコミどころの多さが、この映画の魅力でもある。
「明日が来ない」という絶望の中で、理屈なんかどうでもええから、隣に誰かおってほしい。その切実な願いが、難しい物理の服を脱ぎ捨てて、剥き出しの感情として迫ってくる。
ナイルズが「一人でループにいるより、君と一緒に爆死する方がマシや」と言ったとき、そこには論理もクソもない。あるのは、最高にアホで、最高に人間的な「愛」だけ。
ワイはこの映画が大好き。だからこそ、こんなに楽しくツッコめる。本当にどうでもええつまらん映画やったら、100文字で「時間の無駄」って書いて終わり。
サラが勉強したあの教科書。毎日リセットされるから、マーカーを引くこともできへんかったんやろ。その過酷な環境で物理を極めた彼女は、間違いなくこの映画で一番の「化け物」。
まあでも、そういう無茶苦茶さ込みで映画って面白い。



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