MINASE Divido Deep Blue Urushi Silver Maki-e
時計好き、特に日本のブランドが好きな方はご存知かと思いますが、あまり一般的にメジャーではないドメスティックブランド、MINASE(ミナセ)。簡単に説明しますと、秋田県湯沢市にある町、皆瀬。この雪深い地で時計が作られています。スイス時計製造の聖地のようだということで、「日本のジュウ渓谷」と言われています。
元々は、協和精工という切削工具メーカーとして1963年に創業。そして翌年に、ある時計メーカーから「一回でリュウズの穴を開けられるドリルを作ってチョ」という依頼が。リュウズの穴って、結構何回かに分けて開ける大変な工程。その依頼に応え、それから時計ケース・ブレスレットなどを手掛けるようになり、着実に時計作りのノウハウを蓄積していきます。そして90年代半ばに時計メーカーとなります。もちろん本業の工具製造業も継続中です。
歴史はまたの機会として、今回紹介するのはミナセの代表的なシリーズ、DIVIDOから漆塗りの文字盤の登場ということです。
日本人には馴染み深い “漆(うるし)” ですが、それは字の通り「漆の木の樹液」です。強い接着力や抗菌性があり、「生の漆に触れるとかぶれる」と言いますが、その通り非常に強い物質です。私も子供の頃、山で漆の葉に触れただけで被れたことが多々ありました。酸やアルカリにも強く、金属を溶かす王水(濃塩酸と濃硝酸の混合液)にも耐え、また「一度固まった漆を溶かす方法はない」とまで言われています。これは縄文時代からコーティング剤として使われており、海外では漆器のことを “JAPAN” と呼ぶ人もいます。
樹液をコネコネして塗料として準備します。絞って濾しているのでしょうか。面倒な手のかかる作業です。
そして、染料を混ぜて色を作ります。今回はブルーダイヤルなので、青の顔料を入れます。
文字盤に見えるラメですが、これは漆を塗ってからフリフリ、専用の木製サジで撒いて乗せていきます。これが「蒔絵(まきえ)」なんですね。そしてまた漆を塗る。根気のいる作業です。
となれば、やはり大量生産はむりでしょうね。私なら5個やったらギブアップです。
数回の重ね塗りを施し、磨きをかけてやっと完成です。
さて、この漆工芸ですが、誰が作っているのか?ここも協和精工の人か?となりそうですが、そうではありません。正解は、島本恵未さんという京都にお住いの漆芸家・蒔絵師です。
日本の、京都の伝統産業を背負っておられる女性。今年は大丸松坂屋300年周年の記念品も製作されています。
美術がペーパーテスト95点でも評定が「3」だった僕。実技作品もしっかり提出してこの成績、センスがない僕からしたら、こんなの神の領域。尊敬に値します。ツイッターも始めておられるようです。
以前より取り組んでいた時計の文字盤の内のひとつが形になりました✨記事にして頂いています!
青漆と銀の粒、時計にして頂くと静謐で夜の星空のよう。美しいです。https://t.co/XPZODqL4nB— 島本恵未/漆芸/表望堂 megumi shimamoto (@MegumiShimamoto) December 10, 2020
今のところミナセのホームーページにはこの時計が掲載されていませんが、実はスイスのホームーページのオンラインで購入が可能となっています。もちろん気になるので見てみると・・・
残り1コだ!急げーー!
ケース径 | 40.5mm |
ケース厚 | 12.0mm |
素材 | ステンレススチール 316L |
文字盤 | ディープブルー “銀 蒔絵” 漆ダイヤル |
防水 | 50m |
重さ | 150g |
ムーブメント | KT7001/1 (ETA 2824) |
振動数 | 28,800振動/時(4Hz) |
パワーリザーブ | 38時間 |
価格 |
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