NAOYA HIDA & CO. というブランドへの憧れを語る

高級時計ブランドと言えばロレックスをはじめ、オーデマピゲオメガなど、大企業のイメージがあります。大きな工場を要して、年間数万本~数十万本ほど作る。世界中正規販売店を持っており、その多くが高級デパート高級ブティックの建ち並ぶ大都市。そういうイメージがあります。

それとは違い、マイクロブランドと呼ばれる小規模なブランドがある。独立時計師などもそうですが、今回取り上げるのは、NH WATCH 株式会社 という日本人が立ち上げたブランドのご紹介です。なぜこのブランドを取り上げたかというと、創業者の飛田直哉さんの時計に対する想いが凄く素敵なのと、その想いを形にした時計がとにかくスタイリッシュ。決して真新しいルックスではない。しかし古き良き時代の時計の雰囲気を、ビンビン感じさせてくれる。

NH TYPE 1B

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創業者である飛田さんは、「時計師ではない」という。この業界では30年以上ほどセールスマーケティングマネージメントに携わり、理想の時計を追い求めていたら、結局自分で作り上げるしかないということで、2018年にブランドを立ち上げたと言います。そして彼はその理想の時計の設計やこだわりを叶えてくれるパートナー達と共に時計を作り出す。

飛田直哉さん

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素材は904Lというステンレススチールを使う。この素材はロレックスジラール・ペルゴのケース素材として使われるステンレスで、非常に加工が難しいといいます。その為に加工技術のある企業を探し、その企業も高い技術力で応えてみせる。

904L ステンレススチール

 

NH TYPE 1C

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日本人の腕のサイズに合った大きさ、自分の理想とするスモールセコンドの位置、ケースに収められるムーブメントの大きさ、そして手巻きリュウズを回したときのクリックのノッチ数など、全て妥協を許さずに自分の理想を形にした時計。こだわりが相当あるのがよくわかる。

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ダイヤルは真鍮ではなく洋銀製インデックスは職人が手彫りで行っており、そこにカシュー塗料合成漆)を流し込み、独特の立体感を出しています。美しい、美し過ぎる!

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ムーブメントもこれまた凄い。Cal.3019SSという手巻きムーブメントですが、ベースとなるのはバルジュー7750という汎用クロノグラフムーブメント。ケースサイズに納得のいくサイズであり、スモールセコンドの理想的な位置を考えたムーブメントを探していたら、これになったという。これを独自にチューンアップ。クロノグラフ機構自動巻き機構を取り除き、手巻きへ作り変える。巻き心地を考えて巻き上げなどのパーツも自作、そして納得のいくモデルが完成した。

左から、NH TYPE1A 試作品、非売品。NHTYPE 1C 2021年にあと15本のみ製造予定。NH TYPE 2A 2020年に10本のみ製造。再製造の予定なし。NHTYPE 1B 2019年に7本のみ製造、完売、再製造の予定なし。

twitter より

プロトタイプを経て作られた NH TYPE 1B は、僅か7本の製造。もちろん完売したという。海外からの問い合わせも多いらしく、2020年に作られたのが新作 NH TYPE 1C と下の画像の NH TYPE 2A だ。その両モデルとも製造本数、手作りなので極少です。

NH TYPE 2A

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センターセコンドのこのモデルも独特の特徴を持っている。こちらのダイヤルも、12/3/6/9 のインデックスは手彫りされており、同じくカシュー塗料を流し込んで削ぎ取る加工がなされています。

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このダイヤルの質感も最高にいい。傷一つなく磨き上げられたダイヤルにビーズブラスト加工をしている。手の込みようが恐ろしい。そして特徴的なのがこのではないでしょうか。ステンレスのポール状の厚みのある針。この針も日本の会社が微細加工の技術を活用し、削り出しで作っている。

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しかしムーブメントステンレス針を動かすには、かなりのトルクが必要となる。ではどうやって可能にしたのか・・・それは、この小さな細いステンレス針肉抜きして軽量化しているという。尾錠にもこだわりがあり、使われている革ベルトは、東京の時計ベルト専門店Galuchattail(ガルーシャテイル)」が作っているという。

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そして、The Watch Annual (2020年時計年鑑) に、上記の NH TYPE2A が掲載されるというビッグニュースも。偉業ですよ、これ。

時計年鑑が届いて見たら、NAOYA HIDA & CO. が掲載されていてビックリした。

数ある時計ブランド、そんな中から日本人が作り上げたマイクロブランドである NAOYA HIDA & CO. が今後、もっと注目されていくと思います。一本一本、手作りされる時計なので、製造できる本数は限定される。僕がいつか欲しい時計、手にしたいブランドです。そして飛田さんのソフトな印象から、一本筋の通った信念を感じるところがとても好きです。