ロレックスの離脱は想定内?MCMグループのしたたかな戦略

スイスの新聞社 “Handelzeitung” によると、バーゼルワールドアート・バーゼルを運営しているイベント会社『MCMグループ』が、“Swiss Watch Week”という名称を2020年1月下旬に商標登録していたことが判明しました。実はこれ、裏を返せばこの時すでに、バーゼルワールドからの主要ブランドの脱退、イベントの消滅を予期していたような行動だと思われます。

情報によりますと、MCMグループバーゼル市外での小規模なウォッチフェアを模索しているという。数十年にも及ぶバーゼルワールドという時計見本市には、悪評も多くありました。その1つが、フェア期間中の物価です。

バーゼルワールドが開催される期間、世界各国からこのスイスの地へメディアや時計愛好家、特に富裕層などが数多く入国してきます。それに伴い、レストランなどの飲食店やホテルなどの宿泊施設が軒並み高騰します。この慣習も、以前から指摘されていた課題でした。どこの国でも「観光シーズン」となれば、”それ用” の価格設定になるのは理解できますが、やはり限度というものがあります。その点は、少なからずフェアのマイナス要因だったのは確かです。

目に見える変化がみられたのは、2018年です。この年、世界最大時計コングロマリットであるスウォッチグループの脱退です。スウォッチグループには、ブレゲブランパンオメガロンジンティソなど人気ブランドが傘下となっています。それらが法外な出展料に対して “脱退” という形をとった。

翌年の2019年、日本のブランドであるセイコーを始め、数社が脱退した。しかしとどめを刺したのはやはり2020年ロレックスチューダーパテックフィリップの脱退と、かつて『SIHH』と言われたジュネーブで行われる新たなフェア、”Watches and Wonders” の発表でしょう。これにより、”バーゼルワールドの今後” が決定的になったと言っても過言ではありません。

またHandelzeitungによると、MCMグループスイスローザンヌにあるコンベンションセンターを2021年4月上旬に予約しており、新たなジュネーブウォッチフェアを開催する計画があるのではないかと報告しています。これもまた怪しい動きですね。しかし地元バーゼルの新聞社であるTelebaselは、「MCMグループがその期間にローザンヌでイベントを計画していることを否定した」と報告しています。この辺りは少し情報が錯綜しているところですが、バーゼルワールドのマネージングディレクターであるミシェル・ロリス・メリコフは、以前、彼のチームが2021年に開始したかった新しいイベントはもはやバーゼルワールドと呼ばれず、必ずしもバーゼルで開催される必要がないことを認めていました。

 

しかしながら、ジュネーブに本部を置くコンサルティング会社『LuxeConsult』のオリバー・ミュラー氏によると、2021年MCHグループイベントはバーゼルワールドよりもはるかに小規模であり、おそらく時計、宝石、その他企業を含む約150の出展者がいると考えています。

MCMグループには上得意様のロレックスパテッックフィリップとの決裂がどの程度の傷なのかは不明ですが、再び新たなイベントに関わるのか、それとも交わることがなくなってしまうのか、いや、それ以上にロレックスがどういった形で新作発表の機会を持つのかが気になります。