ファッション業界に於けるルールをかじる

時計は好きなんですが、トータルファッションは鬼ダサいオサーンです。

以前、カスタム時計についての記事を書いたのですが、いかんせん勉強不足でしたのでちょっと調べてみることにしたら、色々と勉強になりましたので、知ったかぶりをしつつ記事を書こうと思います。そうすることによって、「この人、結構勉強家なんだね!」と思ってもらえるのではないか?アホなイメージを払拭する為、今更ながら必死になっているオサーンであります。

恰好のいいカスタムウォッチを一つでも手に入れたいのですが、価格もやっぱり高い。やはり私には高嶺の花。買うことはほぼ不可能に近いので、資金不足で買えないのが悔しい!これは諦めるしかない。ならば、諦める為の理由が欲しい。

ということで、僕が購入を諦める理由を3つにまとめました。


1.金銭的な面で手が出ない

本家のブランドのデザインをさらに研ぎ澄ましスタイリッシュにしているカスタムは、ただただ恰好いいのですが、価格が尋常じゃない。

2.法的にどやねん?

まず初めに理解していただきたいのは、ここで私が法的な答えを導き出せるわけではなく、その道の専門家の考えやそれにまつわる法令がベースとして世の中はあり、それを鑑みた上で各カスタムブランドが腕時計を作っているという前提で話を進めていきます。何かを糾弾したいわけではありません。

さて、時計に限らず世間に認知されているブランドの商標権ですが、日本では知的財産法契約法会社法商法不動産法労働法広告法国際取引法関税法等を含む法領域の総称として、 “ファッションロー” といわるものがあるようです。これは正式な法律の名称ではなく、特定の業界(この場合はファッション)の法分野を呼ぶもので、エンタメやスポーツにおいてもそれぞれ “エンタメ法” や ”スポーツ法” などがあります。

ファッションデザインの保護に関する法律の歴史は、1711年に制定されたフランスの「リオン絹織物産業の共同従業者および製造者のデザインの盗用に関する執政官規則」に始まる、と角田政芳・関真也 両氏の著書「ファッションロー」の冒頭に記されています。でもそんな古い話はいいとして、リメイク品などの商標法についてはどうなのでしょう。

今や私のようなド素人でも、3Dプリンターとデータさえあれば、素材こそ限定されますがその形を造形することができる時代です。商標権とは、商品やサービスについて識別するべくロゴマーク等に付与されている権利であり、特許庁での登録が必要です。著名なブランド品は、ロゴマークはもちろんのこと、被服などは生地についてまで商標登録されていることがあります。

今回の内容とは違うのですが話を進めるにあたり、転売についても少し触れたいと思います。

正真正銘ホンモノのブランド品の転売は多くの場合、問題になりません。適法に製造・譲渡されたブランド品を転売する行為は、形式的には商標権侵害に該当する行為にあたるとしても、転売された商品はホンモノと同一性が保たれており、出所表示機能(製品・サービスの製造者あるいは提供者を明示する機能)と品質保証機能(満たすべき水準の品質を保証する機能)という2つの商標の機能を害することがないため、その後の譲渡・輸入等行為については違法性がなく、商標権侵害は成立しない(最高裁判例:損害賠償,商標権侵害差止等請求事件)と考えられているから、だそうです。

ここで注目されるワードが、上記の 同一性 です。最高裁の判例では取り上げていませんが、正真正銘ホンモノの機能・性質・形状を元の状態に戻す方向の作用を施したであれば、ホンモノと「同一性」が維持されているとの評価を得やすいと考えられるそうです。

逆に、ホンモノである品の元々の機能・性質・形状から遠ざかる作用を施すと、ホンモノと同一性を欠いたと判断される可能性があるということですね。そう考えると、何かをリメイクするということは、元のホンモノである品の機能・性質・形状から遠ざかる方向の作用を加えることがほとんどではないでしょうか。

この解釈でいくと、ブランド品と同一性を欠いたリメイク品を製作・販売した場合、ブランドの登録商標と同一または類似の指定商品に登録商標を使用したのであれば、商標権侵害に該当する行為にあたるのではないかと考えられます。

突き詰めると、リメイク品を見た消費者が、「〇〇社が作った商品だ」と誤認することが考えられる時点で、出所表示機能を害していることになり、また、商標権者がそのリメイク品の品質管理に及ばないので品質保証機能も害していることになります。

その上、リメイク品にはその元となった商品のロゴや形状などが再現されますが、その特徴的な部分には商標登録がなされている可能性が極めて高いと思われます。

参考:商標権侵害の判例(東京地方裁判所判決平成4年5月27日)として、ファミコンの改造などを巡る任天堂とハッカー社との裁判がありました。詳しくは ハッカージュニア で検索してもらえれば出てきます(検索結果)。

これまでの話は日本での法律や判例であり、海外のそれとは内容・解釈が当然変わってきます。海外での判例に関しては全くわかりません。ただ言えることは、あれだけ堂々とカスタマイズされたブランド時計を製作・販売し続けていることは事実であり、市場に流通しています。それに対して本家のブランド側が訴え、裁判沙汰になっても変わらず売られているということは、そこに違法性が認められないという判決なのか、もしくは本家ブランド側と何らかの和解をしたのか、そこは僕は知りません。

3.日本国内での取扱いの問題

僕はいつか手持ちの時計を(全てではないが)売る時が来ると思っています。

高級時計をさらにデコレーションすることは今に始まったことではなく、何年も前から行われていました。自分の保有する時計のオリジナリティーを高めるため文字盤を貴石に交換したり、ダイヤモンドをベゼルや文字盤に着ける “アフターダイヤ” が流行った時期もありました。これは購入した個人が楽しむものとしては問題ないのですが、これを仮に買い取ってもらおうとした時、難儀なんです。

もちろんカスタムモデルというのを欲しい人は一定数いるのは理解していますし、昔と違って今のカスタム時計は本家ブランドを置き去りにするほどデザイン性を上方修正していると感じさせる物が多く出てきています。

がしかし、市場での取扱いが非常にシビアなのが実情かと思います。なぜならロレックス社は、「ロレックス社外で加工された時計については、著作法違反の為、買取、販売してはならない」というような旨の通達を出しています。買取りをしてくれるのは、“改造前の状態(オリジナル)に戻せる場合” なら可能性がありますが、当然、買取価格は下がります。

別に自分が楽しんだので買取りで値段が付かなくても気にしないっていうなら問題ありませんが、並行店などの市場では取り扱わないという事実があります。代表的な市場である、「TOP J 新宿オークション」・「JBA(日本ブランドオークション)・「KOMEHYOオークション」などはアフターダイヤのロレックスは取り扱わない、となっているようです。


ちょっと思ったんですが、仮にカスタム業者が裁判で負け製作・販売禁止となったら、今市場にでている高い技術・優れたデザインのカスタム時計がマニア垂涎の時計となるかも知れません。

ただ、こういった事実がある以上、

なんかややこしい

しかも僕が一番気に入っているカスタム業者である Artisans de Genève は、アクセスしてもらえればお分かりかと思いますが、こうトップページで確認してきます。

要約すると、「我々はカスタム時計を製造・販売しているのではなく、個人からの依頼によって製作するものであり、私的利用のみ認めるもので、商業的利用は承認していません。」といった内容となっています。

TITAN BLACK も同様の表記をしています。

上記の両カスタム業者は「俺らカスタム時計を売ってないから!」と明言して、時計ブランドからの商標権侵害を避けてますね。ということは、自分の時計をカスタムしてもらって、個人で楽しめってスタンスが良いのでしょうね。

ん~、この先どうなるのだろう?