【2023年版】グループに属さない系の時計ブランド その3

2023年、時計好きなら知っておかなければならないブランドと私が勝手に決めて押し付けているこの記事ですが、取りあえず今回で終わりです。こうしてみると、独立系時計ブランドも結構あるもんです。しかしその購入には大きなハードルがあったり、そもそも作っている数量が極端に少なかったりという壁にぶち当たったりします。興味のあるブランドが一つでも増えれば、と思っています。

 

THE INDEPENDENT WATCH BRANDS

BELL & ROSS

ベル&ロス は、デザインを担当するブルーノ・ベラミッシュ(ベル)と経営を担うカルロス・ロシロ(ロス)によって1992年に大学のプロジェクトとして考案されました。2005年にBR 01の創造によりブランドアイデンティティを確立。この時計は、飛行機のコックピットのダッシュボードからインスピレーションを得たもので、四角いケースに丸いダイヤルがあり、大きく、見やすいステンシル風の数字がフレームによって囲まれています。この独特の美学は、それ以来こだわり続けています。初期のベル&ロスの時計は、ベラミッシュのデザインの指導者であるヘルムート・ジンが率いるドイツのSinn Watchesとのパートナーシップで製造され、販路を開拓。2002年のシャネルによる買収と、その後の会社への投資により、ベル&ロスは新しい道を切り開き、持続的な成功を達成する命綱を手に入れました。BR 01は、より小型のBR 03を生み出し、最近コレクションに加わったBR 05を生み出しました。

BR 05は、航空用ツールウォッチのルックスをよりスタイリッシュでスポーティーな方向に、インテグラルブレスレットが付いています。ダイバーズウォッチは、四角いケースを持つISO規格に準拠したBR 03-92を製作。また、より伝統的なスタイルを求める人々のために、同社は  “V” が “ヴィンテージ” を意味する丸いケースのBR-V2を製造しています。

設立:1992年

本社:パリ(フランス)

代表モデル:BR 01、BR 05、BR 03-92 ダイバー

メモ:ベル&ロスは、フランスの宇宙計画のオフィシャルサプライヤーです。

 

BREMONT

ニック・イングリッシュとガイルス・イングリッシュ兄弟が、2002年にブレモンを創業した際の2つの目標は、時計製造をイギリスに復活させることと、亡き父親(パイロット、時計コレクター、機械好き)に敬意を表することでした。父親の影響で兄弟たちは航空、時計、機械に対する情熱を持つようになりました。ブレモンの時計は、クラシカルなパイロットモデルのMB1やアルティテュード、モータースポーツにインスパイアされたクロノグラフやダイバーズウォッチといった、スタイリッシュな形を表現しています。

ブレモンは、比較的短い期間に多くのパートナーシップを構築。その中には、英国国防省との提携があり、一般市場向けの公式ライセンスを取得したミリタリーシリーズの時計が発売されています。毎年イギリスでの時計製造を目標にしており、2022年には、ロンドンで製造された初めての独自キャリバーを搭載したデュアルタイムウォッチのロンジチュードが発売されました。

設立:2002年

本社:ヘンリー オン テムズ(イギリス)

代表モデル:アルティテュード、スーパーマリン、ロンジチュード

メモ:共同創設者であるニック・イングリッシュは、ブレモンの時計が使用された映画『キングスマン』の第1作にゲスト出演しました。

 

CZAPEK

チャペックは、2015年のクラウドファンディングで始まりましたが、その名前は高級時計界で最も権威のあるブランドの1つと言われるパテック フィリップの共同創設者である人物に遡ります。1839年、フランソワ・チャペックはポーランド移民であるアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックのパートナーであり、パテック チャペック& Cieという会社を設立しました。1851年にジャン・アドリアン・フィリップが参加し、チャペックがパテックとの契約終了後に退社した後、この会社はパテック フィリップとなりました。現代のチャペックの時計は、名前の由来であるフランソワ・チャペックの野心的な技術と美的精神を称えています。時計コレクターや時計業界の人達は、チャペックのケ・デ・ベルクが設立1年後に初めてのGPHGをもたらしたことに注目。

チャペックのコレクションには、エレガントでクラシックな時計だけでなく、ラトラパントクロノグラフやトゥールビヨンのような高度な複雑機能を備えた時計も含まれています。チャペックのラグジュアリースポーツモデルであるアンタークティックは、パテック フィリップと同様、入手困難なモデルとなっています。

設立:1845 年(起源)、 2015年 (現代)

本社:ラ・ショー=ド=フォン(スイス)

代表モデル:アンタークティック、ケ・デ・ベルク

メモ:創業者のフランソワ・チャペックは、ポーランド語で書かれた最初の時計製造に関する書籍を執筆しました。

 

F.P. JOURNE

フランソワ-ポール・ジュルヌは、マルセイユで生まれ、パリ時計学校を卒業後、独立時計師として博物館などの複雑な時計の修復を手がけた後、1999年に彼の名前を冠したブランドを設立しました。当時も今も、彼のモットーは “Invenit et Fecit” すなわち「考案し、作り出す」ということであり、すべての時計が同じ場所で考案され、製造されています。20年以上にわたり、F.P. ジュルヌは、極めて少数の時計を毎年生産しながら、熱心で知識豊富なコレクターたちから熱烈な支持を得てきました。

自社製造のキャリバーの素材は一貫してゴールドを使用しており、ケースのシルクロープパターンのリューズや、文字盤に映える独特の形をしたブルーの時分針など、美的要素が詰まっています。女性向けのエレガントというモデルはクォーツキャリバーを先駆的に開発し、時計を着用していないときにバッテリーが止まり、最長18年間の寿命を実現しているらしいのですが、ホンマかいな…

設立:1999年

本社:ジュネーブ(スイス)

代表モデル:クロノメーター・スヴラン、トゥールビヨン・スヴラン、サンティグラフ

メモ:F.P. ジュルヌは、ジュネーブ時計グランプリ(GPHG)で金の針賞(大賞)を3回受賞した唯一の時計師です。

 

GREUBEL FORSEY

フランス人のロベール・グルーベルとイギリス人のステファン・フォルセイは、2004年にブランドを設立。そのスイスのブランドで卓越した複雑時計を作り続けています。グルーベル フォルセイは、ダブルトゥールビヨン30°を発明し発表。革新的な取り組みを続けてきました。

その多くの代表的な時計は、さまざまな創造的なトゥールビヨンを特徴としており、2008年に発表された “クアドラプルトゥールビヨン” のように、4つのトゥールビヨンが搭載されているものもあります。この時計は、巧みな差動装置で回転速度が異なる2つのダブルトゥールビヨンを接続しています。近年、グルーベル フォルセイは、特徴的なデザインと受賞歴のあるクロノメトリック技術を、GMTスポーツのような他のタイプの時計にも適用しており、この時計は超複雑なグローバルタイム表示と人間工学に基づき、カーブしたスポーティなケースを備えています。

設立:2004年

本社:ラ・ショー=ド=フォン(スイス)

代表モデル:ダブルトゥールビヨン30°、クアドラプルトゥールビヨン

メモ:2012年、グルーベル・フォルセイは独立時計師であるフィリップ・デュフォー氏と協力して、”Birth of a Watch” というプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、産業化によって失われつつある伝統的な時計製造の知識と技術を保存するためのものです。

 

MORITZ GROSSMANN

モリッツ・グロスマンは、熟練した時計職人であるクリスティーネ・フッターによって2008年に創設され、ファーストモデルを2010年に発表した歴史の浅いブランドですが、グロスマンという名前の歴史ははるかに古くまで遡ることができます。カール・モリッツ・グロスマンは1826年にドレスデンで生まれ、アドルフ・ランゲと並んでグラスヒュッテの時計製造業の先駆者の一人であり、ドイツ時計学校をグラスヒュッテに創設しました。ドイツの時計業界の中でも唯一無二な存在の時計職人の一人であるモリッツ・グロスマンは、年間数百個の時計しか製造しておりませんが、その中でも、もっとも人気のあるモデルは “ベヌー” です。

この時計は古典的なデザインで、厳密な基準に従って製造されています。そしてドイツが発祥の機構であるフライング・トゥールビヨンなど、いくつかの複雑機構にも手を出しています。その他の注目すべきモデルには、メッシュ状のダイヤルが印象的な “アトゥム・ピュアM” があり、この時計はムーブメントを見せるためのデザインが施されています。また、”ユニバーサルツァイト” という世界時計も2022年に発表され、注目を集めました。グラスヒュッテで製造される多くの高級ブランドと同様に、モリッツ・グロスマンの時計のムーブメントには、3/4プレート、グラスヒュッテのリブ装飾、手彫りのバランスコックなどの伝統的な要素が取り入れられています。

設立:2008年

本社:グラスヒュッテ(ドイツ)

代表モデル:ベヌー、アトゥム

メモ:モリッツ・グロスマンが世界の出来事にインスパイアされて作った特別モデルの中には、2019年に元アメリカ大統領のトランプと北朝鮮の指導者キム・ジョンウンとの歴史的な首脳会談を記念する “Meet in February エディション” というのもあります。

 

NOMOS GLASHÜTTE

“ベルリンの壁” 崩壊からわずか2ヶ月後の1990年に創設されたノモスは、比較的歴史の浅い企業であるにもかかわらず、ドイツの時計製造ブランドの中で最も人気のあるブランドの1つに上り詰め、また、手ごろな価格のブランドで人気。ノモスの成功は、合理的な価格設定、クラシカルなバウハウスデザイン、そして優れた品質の組み合わせによるもので、ノモスの時計は数多くの賞を受賞しています。

過去数年間、ノモスは自社製ムーブメントの開発に着取り組んでおり、手巻き式や機械式を含めより多くの時計に搭載し、これまで使われていたスイス製ムーブメントにから徐々に自社製ムーブに変更されています。クラシックなモデルで人気なのは、”タンジェント”、”オリオン”、そして四角いケースの ”テトラ” など、シンプルでノモスらしいモデルということで人気があります。また、ダイバーズ、”アホイ” やモータースポーツをイメージした “アウトバーン” など、よりスポーティーなモデルでもノモスらしさが存分に見て取れます。

設立:1990年

本社:グラスヒュッテ(ドイツ)

代表モデル:タンジェント、オリオン、メトロ、アホイ

メモ:2012年以来、ノモスは医療団体「国境なき医師団」と提携し、その人道主義的な活動を支援する特別な限定版を製造しています。その収益金は、同団体のミッションに役立てられます。

 

PARMIGIANI FLEURIER

マスター時計師のミシェル・パルミジャーニは、古時計の修復の分野で著名な人物でした。そんな彼は1996年に自身の同名ブランドを設立し、修復工房の最も権威ある顧客の一つであるスイスのサンドゥス家財団の支援を受けました。25年後、パルミジャーニ・フルリエは、彼の黄金比に基づくデザイン哲学によって製造され、最も独創的で創造的な独立系メゾンの一つとして、今では確固たる地位を築いています。

そして同社は、ケースから文字盤、ムーブメントまで全ての部品を製造する5つの専門的なアトリエを持つ、垂直統合型ブランドの一つです。その時計コレクションには、ギリシャ建築に着想を得たトリック、エレガントなトンダ PF、そしてスタイリッシュなスポーティなトンダ GTなどが含まれ、涙滴型のラグ、デルタ針、そしてギョーシェ模様などの高い技術が施されています。

設立:1996年

本社:フルリエ(スイス)

代表モデル:トンダ PF、トンダ GT、トリック

メモ:ミシェル・パルミジャーニ氏の工房で修復されたアンティーク時計やヴィンテージタイムピースは、ジュネーブのパテック・フィリップ博物館やミラノの装飾美術館などで見ることができます。

 

URWERK

ウルベルクのコンセプトは、MB&Fと同じように、伝統的なアナログデザインとこれまでの技術から可能な限り遠ざかった腕時計のための時間計測機械を作る、という使命感から生まれています。1997年、時計職人のフェリックス・バウムガートナーとデザイナーのマーチン・フライによって設立されたウルベルクは、伝統的なアナログデザインからできるだけ遠い、リストウォッチ用のタイムキーピングマシンを作ることを使命としています。

ビジュアルデザインの代名詞は、3本のアーム付きの回転サテライトを使用して時間を表示することで、スケールに沿った非伝統的なレトログラードの分表示と組み合わせています。革新的な時計技術をさまざまな時計に応用しており、ブラックPVDコーティングされたプラチナ、ガンメタル調のチタン、そしてスターウォーズにインスピレーションを得たゴールドのUR-100 “C-3PO”エディションなど、多様な素材やデザインで表現されています。

設立:1997年

本社:カルージュ(スイス)

代表モデル: UR-101、UR-102、UR-103

メモ:ブランド名の由来は、時間の単位が最初に計測された古代メソポタミアの都市「ウル」と、時計のムーブメントを表すドイツ語の「ヴェルク」から派生しているようです。


多くの雲上クラスブランドが今回も多く登場しました。あまり馴染みのないブランドが多いかもしれませんが、ここに出ているブランドはやはり高い技術力とポリシーをもっています。腕時計というモノだけではなく、美術・工芸品としての価値もあり、本物を見たときには心を奪われる時があります。それが時計の良さでもあるかと思います。