天才?鬼才?「どうしてそんなの作ったの?」的な時計達

「時計」とは、時間を知る為だけではない。そこには宇宙のような無限の世界を感じる時がある。それは人間業とは思えないほど小さくて精密な、卓越した技術を駆使して作られた時計、または、時計とは思えない奇抜なデザイン。

そんな「高くて買えないよ!」とか、「どこに着けていくの?」と言いたくなるようなモデルを独断と偏見でご紹介したいと思います。


ハリーウィンストン

Histoire de Tourbillon 10

ダイヤモンドなどの宝石、宝飾ブランドとして名を馳せるハリーウィンストンが「イストワール・ドゥ・トゥールビヨン」というモデルの10周年を記念して制作したとんでもないモデル。見て何となく気付くと思いますが、トゥールビヨンのようなモノが角型ケースの四隅にセットされている。それは紛れもなく、トゥールビヨン。そう、1個でもビックリするほど価格が跳ね上がる複雑機構のトゥールビヨン4個も付ける。”12“と”6” が見えるので、時計と判断できる。しかし一見、何かを測るような機器にも見えなくもない。

価格は税抜きで約9,000万円ホワイトゴールドローズゴールドモデルとも世界限定各10本のようです。上の画像は、ウィンストニウムというプラチナベースロジウムの含有量を増やした特殊合金製のモデルで、世界限定1本。こちらも約9,000万円だそうです。

 

 

ルドヴィック バルアー

Upside Down Racing Green

フランソワ・ポール・ジュルヌF.P.ジュルヌ)で7年間仕事をした後独立したルドヴィック・バルアー。その特徴は、複雑な独自の時刻表示方法を模索し続けているところではないでしょうか。上の画像はアップサイドダウンというモデル。インデックスの数字がひっくり返っているが、一つだけ逆になっていない時間がある(この画像では10時)。それが「」を表し、長針は分針になっている。そう簡単には時間をわからせてもらえない。約1,000万円という価格です。

Half Time Gold  Green/White

同じくこちらはルドヴィック・バルアーハーフタイムというモデル。これは、12時位置の枠に入っているローマ数字が「」を表している。その他の時間は、上下真っ二つに分断されている。12時位置に来たときだけ、ピッタリとローマ数字が完成するようです。「」の表示は、レトログラードになっています。ルドヴィックさんは、どうも普通に時間を表示することが嫌いなようですね。こちらも、1,000万円ぐらいの価格です。

 

 

ウルベルク

UR-100 Gunmetal

ここ数年で知名度は上がってきましたが、その知名度も「変態時計」としての知名度ではないでしょうか。時計という概念に縛られず、最先端の技術を時計に組み込んでいる。画像のUR-100は普通の時間を表示するだけではなく、地球の自転による移動距離や、太陽に対する地球の軌道上の運行距離が表示されている。それが必要かどうかは問題ではない。それが付いているのだ。約600万円~のようです。

UR-210 Amadeus

こちらのブレスレットまで彫り物がされているモデルは、UR-210 アマデウス というモデル。エングレーヴィングされていないノーマルモデルもありますが、オリジナルでここまでケース、ブレスレットをエングレーヴィングするのも珍しいですね。まるでカスタムオーダーしたかのようです。さすがに価格は2,600万円だそうです。

 

 

MB&F

HM3 Frog

MB&Fマキシミリアン・ブッサー&フレンズ)の創業者、マキシミリアン・ブッサーが作り出す、斬新過ぎる腕時計の概念を大きく変えるようなデザインで有名です。画像のHM3 フロッグは、カエルを連想させるようなデザイン。それよりも、だいたいこんな形の時計をつくろうとは普通思わない。視認性や堅牢性完全に捨てている(と思う)。ちょっと思考がイッちゃってる感じがする。価格は、約1,500万円ぐらいなのだろうか。詳しくはわかりません。

T-REX

上の画像のモデルは腕時計ではないですが、「じゃ、何時計だよ!」と言いたくなる時計。インテリアとしてバエるかも知れませんが、ウチに置いてあったら「お父さん、ヴィレッジ〇ァンガードで買ってきたの?」と言われそうです。因みにこれ、T-REX というモデルの時計です。ティラノサウルスってことですが、何とまぁ人によっては、こういう表現になるんですね・・・

 

 

コンスタンティン チャイキン

Minotaur

鬼才という言葉がよく似合うロシア出身の独立時計師コンスタンチン・チャイキン氏(Konstantin Chaykin)が作る独特の世界観。時計全体が生き物の顔になっており、目の玉で「時」と「分」を表している。そしてこれまでのこの顔をモチーフにしてきたモデルは、口の部分がムーンフェイズになっていたのですが、2021年モデルでは「曜日」を意味しているようです。中国の新年を祝うモデルとして登場しているので、デザインはミノタウロスという名の通り、「丑(うし)」のようです。価格は約200万円ぐらいだそうです。日本での価格はもう少し高そうです。

Russian Time

そしてこちらは同じコンスタンティン チャイキンでも、イメージとは違って「まとも」に見えるモデル。しかしこれ、よく見るとロシアの地図が描かれています。そう、ロシアは世界で一番大きな国。その都市によって時間帯が大きく違います。”ワールドタイム” ではなくロシアの時間帯専用モデル、”ラシアンタイム” なんです。これはかなり世に出回りにくいですよね、需要が限られるし・・・見た目ではなく、こんな時計を買っちゃう人が「真の変態さん」かも知れません。

 

 

菊野 昌宏

Wadokei Revision Gyousyou

日本を代表する独立時計師協会のメンバーであり、最年少メンバーでもあるという菊野昌宏さん。彼の時計は年に2~3本ほど作られるという。もう芸術品であり、時計としては完全に変態の域を超えている。このモデル “和時計改 暁鐘” は、オンリーワンのタイムピースで、価格はわからないが2,000万円以上はするのではないでしょうか。裏側には木目金があしらわれている。これは複数枚の金属を重ねて、焼いて叩いてを繰り返して作り出す非常に手間のかかる技術です。

 

Mokume

そしてこのモデル “木目” は、先ほどの木目金をダイヤルに使っている。今では受注していませんが、これまで作られたモデルも、二つとして同じ模様がない唯一無二の時計。もちろん世界的に菊野さんは時計界では有名であり、その希少性も知れ渡っています。そんなこともあり、菊野さんの作る時計の半分以上は海外からのオーダーだと思います。国内外から注目されている菊野さんと菊野さんの時計は日本の宝ですね。国宝級!


てなわけで、なかなか普段はお目にかかれなかったり、一見、時計とは思えない特殊なモデル達をご紹介しました。これらは、製造している本数が極端に少ないということもあって、手に入れるだけではなく、見る機会も少ないかと思います。また、時計好きの方たちの中でもこういったモデルが最終的な “行き着く先” だったりもするのかも知れませんね。