コロナ禍のオークションハウス事情

高級時計が好きな多くの方々は、資産が一般の人よりもあると思います。2019年末からの新型コロナウイルスの猛威で、一気に世界の経済が様変わりしました。私は弱小時計コレクターですので、コロナ禍に於いてもそれほどダメージは受けていませんが(多少給料は下がりましたが)、時計界隈の方々は好景気の雰囲気すら感じます。私のような根っこが細くはなく、盤石な資産・仕事があると思われ、しっかりと高級時計界は支えられているように感じます。

しかしそう見えるのは一部であり、実際には大きな経済的打撃を受けているようです。先日も世界最大の時計グループであるスウォッチグループが、約40年ぶりに赤字へと転落したというニュースがありました。記事にもありますが、確かに売り上げの1/3が約10万円以内のレンジであり、アップルウォッチなどの新たな勢力が押し寄せてきているということもありますが、それを差し引いても “大不況” なのかも知れません。

スイス・ビエンヌにある世界最大級の木造建築であるスウォッチ新本社(建築家の坂茂氏が設計)

上記のスウォッチグループのようなニュースもありますが、時計の主なニュースとして目にするのは、パンピー(一般人)には理解し難いほどの尋常じゃない価格となるオークションではないでしょうか。

パテックフィリップ グランドマスターチャイム Ref. 6300A

そんなオークションの世界も、新型コロナウイルスパンデミックの影響を受けているのでしょうか?今回は少しデータを用いて見ていきたいと思います。

世界の5大オークションハウスであるクリスティーズ・サザビーズ・フィリップス・アンティコルム・ボナムスを見ていきます。インターネット限定オンラインオークションを大幅に取り入れたこともあり、オンラインオークションの売上が約3倍になったと言われていますが、2019年2020年の比較では、総売上高は約19%(約3億1,600万スイスフラン)ダウンと言う結果となりました。

オンラインオークションは、サザビーズ129回のイベントを行い、オークションハウス上位5社オンラインオークションでの売上合計は260%も上昇しました。しかしながらこの売上割合は、総売上高の26%に過ぎず、売上高が32%も減少したライヴオークションを上回ることができませんでした。ちなみにライヴオークションの入札に含まれるのは、会場から、電話から、オンラインからの入札の合計となっています。

次に、オークションハウスセールスシェアを見たいと思います。

2020年に販売された時計の数は、9,392本だそうです。これは前年比10%減であり、各時計の平均支払額も前年比10%減33,600スイスフランでした。中でも2020年4~6月辺りでは、約59%も売上が落ち込みました。10~12月辺りの売上は戻ったものの、それでも19%減ということだったようです。

最後に各オークションハウス一本当たりの平均落札価格を見てみます。

これを見るとサザビーズが下落していますが、他は横ばい上昇しています。クリスティーズについては2019年に “Only Watch” という出品された時計がかなり高額落札となるオークションを2年に1度主催していることもあり、そして世界最高落札額を叩き出したパテックフィリップ グランドマスターチャイム Ref. 6300A が平均落札価格を押し上げているという事実があり、下落が顕著となっています。

一番最初のグラフの通り、フィリップスの売上のみが11%上昇している一人勝ち状態となっています。が、新型コロナウイルスの猛威は終息に向かっている(と思われる)ので、再びオークション市場も再び熱くなると思っています。