【ロレックス】認定中古品取扱い問題を考察する

ロレックス愛好家・高級時計愛好家・転売専門家の皆さん、こんにちは、オサーンです。

衝撃的なニュースが2022年の暮になって飛び込んで来ましたね。前々から噂レベルで言われていた、「ロレックス認定中古時計」というシステム。時計業界でロレックスが先陣を切っているわけではありませんが、ロレックスが起こす行動は、他ブランドも追随する形となっているのが時計界のトレンドです。恐らくこれからも増えていくと思われます。フランク・ミュラーや、H.モーザーなどは認定中古時計を取り扱っており、そして既に欧州の一部のロレックス正規店では運営されています。

※フランク・ミュラーでは下取りと委託販売の2通りがある

※H.モーザーも委託販売をしている

※海外のロレックスでは既に始まっているところも

さて、色々な観点から見ていきたいと思いますが、一番気になるところが  “認定中古時計の価格” ではないでしょうか?その辺りは実際に認定中古時計として販売しているところの価格を見ると、ある程度の傾向は掴めるかもしれません。

※Ref.116710BLNR 約300万円

※Ref.116610LV 約340万円 Ref.116610LN 約230万円

※Ref.116613LN 約250万円 Ref.116613LB 約255万円

ご覧頂いたように、予想はしていましたが認定中古時計は正規店にて “プレミア価格” で販売中となっています。今のところ、「販売後3年以上経過した個体を取扱う」という規定のようですが、これから先の二次流通に関するいくつかのシナリオが考えられます。

まず、ロレックス正規での管理の元、二次流通するという点を踏まえ、並行店で形成されている市場価格よりも高く設定される可能性、というのが一つあります。いわゆる、「付加価値」です。認定中古時計購入時にロレックス正規の2年間保証が付与させることを考えれば、市場よりも高く設定してもロレックスは “売れる” と判断する可能性があります。この場合、できるだけ安く購入したい購買層は並行店で購入する傾向が予想されますが、製造終了中古モデルなのに正規店で購入できるという付加価値を求める層や、価格以上に安心を求める富裕層、ヴィンテージ・セミヴィンテージと呼ばれる20年以上前のモデルにコピー品・改造品でない安心感を求める層の多くが認定品を購入すると思われます。そもそもロレックスがこの市場に入る要因の一つに、流通しているコピー品対策もあると思われます。

2つ目に、プレミア価格で販売されるが、市場の相場に連動せずに安定的なロレックス独自の価格設定で販売する可能性です。しかしこの場合は長い目で見ると、結局、現在と同じような結果になる可能性があります。認定中古時計が並行店と同等、もしくは相場が上昇して認定中古時計の方が市場よりも仮に安くなった場合、認定品に人気が集中し、再び現在のロレックス同様、正規店では新旧共々品薄となり、現在と同じような並行店が作り出す相場となる可能性があります。これだと、認定中古時計の取扱いが本格的にスタートする黎明期に一時的に並行店が苦しむことになりそうですが、結果、現在と同じような相場に戻ってしまうと思われます。

しかし私がいちばん懸念していることは、そんなことではありません。多くのロレックスランナーが正規店マラソン時に言われる

「現在のところ、在庫はございません。」

というロレックス店員さんからの返答。額面通りに受け取っているランナーはどれぐらいいるだろうか。多くのランナーが、「良い子にしてたら次、もしかしたら出してもらえるかも知れないし、おとなしく笑顔で退散」と涙を呑んでいるのではないだろうか。

しかし、“本当は在庫が、(裏に)あるんじゃないのかな?” と思っている人も多いはず。実際は店のスタッフしかその真相はわかりません。でも、でもですよ、仮に在庫が本当は “ある” のに “ない” と言われているのが現状ならば、それが今回の認定中古品を取扱うことで、また一段と加速するのではないかと懸念している。なぜ、”ある” のに “ない” と答えるのか?それは店側が客を選別しているからだろう。転売しなさそう、昔からの付き合い、資産家、様々な理由から選別されている。何度もいうが、これはあくまでも “例え話” です。真相は知りませんが、少し前に私の時計仲間が、あるロレックス正規店の店員さんに、

「今、お探しのモデルはございませんが、チューダーはどうですか?」

と言われたことがあった。彼はかなり怒ってましたが、今回の認定中古時計が販売されるとどうなるか。ロレックス正規店で新品を買いたくて訪問した時に、

「ご希望のモデルは現在、認定中古品なら在庫があります。」

と提案される可能性が大きくある。恐らくこの案内は現実として起こってくるだろう。ロレックスを買いに行って「在庫なし」と言われて諦めていた人達に、認定品を提案するのは悪くはない。しかし疑ってもキリがないが、上記の例え話が本当ならば、新品の時計は特定の客用に、それ以外はできるだけ認定品で対応する流れができてもおかしくない。これまで新品のみを販売していたロレックスが、二次流通市場の客を自ら作り出し、自社のプレミア認定中古品を売るという独占状態を作り出すというシナリオも考えられる。何度もいうが、例え話です。凄いリアリティのある話ですけどね。

ここで疑問が湧いてくる。この認定中古品の仕入先はどこか、と考える。やはり過去にロレックスをどこかしらかで購入した個人、となるだろう。他は考えられない。となれば、こんなことも考えられる。例えば、正規店で新品で買えたロレックスを3年以上保有していた時、また新たに欲しいモデルが出てきた。マラソンを始めるも、「在庫なし」が続く。そんな時に、現在自分が持っている時計が中古市場でも人気のモデルなら、中古品の仕入れにロレックスが動き出す。

ロレックス:ロ / 客:客

客:「〇〇が欲しいんです。」

ロ:「そうですか…お客様の今着けておられる時計はどうされますか?もしよかったら下取りいたします。」

客:「いや、これは売らないつもりです。」

ロ:「在庫はございません。」

もしくは

客:「希望モデルが買えるなら、これを手放してもいいかな。」

ロ:「はい、在庫が1点ございます。」

なんて極端だがあり得るかもしれない、と想像してしまう。新しいモデルが欲しい客側は買うことができるが、下取りする側のロレックスは、希望モデルを販売することによって客の足元を見て買取相場よりも安く下取りをすることが可能なのではないだろうか。

こうして問題点を色々と勝手に考察してますが、悪いことばかりではありません。それはやはり、古い個体の取扱いです。5桁品番のモデル以前の4桁品番とかになると、相当知識がないと真贋は見抜けない。たとえ並行店で購入したとしても、大手の店舗なら信用があるかもしれないですが、そうでないところの商品は少し信用しづらい。しかし正規認定品となると、安心度合いは格段に違う。内部パーツの一つ一つまで、正直言って素人の僕にはわからないし、プレミア価格はその信頼を買うための販売価格と捉えることができる。

しかしそうなると、手巻きデイトナや4桁品番の古い個体が認定中古時計の白タグを付けられて販売、それがまた一段と高い値で流通し、ロレックス認定中古経由品という付加価値のあるヴィンテージモデルの相場が大きく上昇しそうですね。

ただ、ロレックスがヴィンテージモデルを取扱うとなると、文字盤や針に使われている夜光塗料に問題が発生します。ロレックスという会社は、実用時計として理想を追求しています。ヴィンテージとして人気の要素となる夜光塗料の “焼け” は、ロレックスからすれば経年劣化。コレクターや並行店では “経年変化” とプラス材料として評価される部分が、ロレックス認定中古時計となると恐らく真新しい夜光塗料が付いたパーツに交換されることでしょう。ヴィンテージロレックスの世界では、使われているパーツの “オリジナル性” が重要視される傾向があります。そこをしっかりと考えて、敢えて手を加えずにノータッチでオリジナル重視(当時物)の個体をメンテナンスして販売できる並行店は、認定中古時計との大きな差別化を図れる部分でもあります。

結局のところ、並行店の行く末についてはこれから様子を見ていきたいと思いますが、ロレックスにとっては更に儲かるシステムが構築される結果になるのは間違いないでしょう。