【ロレックス】認定中古プログラムに対する中古市場の反応

前回の続きとなります。ロレックスが2022年から始めた認定中古プログラム(CPO)ですが、世界最大のマーケットであるアメリカで開始されました。そうなれば、セカンドマーケットと呼ばれる二次流通の小売業にも当然影響があるはずです。では実際に二次流通市場の渦中の人達はいったい今回のCPOに対して、どのような想いを持っているのでしょうか?

そのインタビューが記載されていたので、ご紹介します。


Bob’s Watches オーナー:Paul Altieri

「ブランドがビジネスとして中古商品を取扱うことは、ポジティブだと思います。それは、この中古市場というカテゴリーが認められたことを示しているからです。問題なのは、これが私たちのような既存の中古市場のディーラーにどのように影響するかです。これからどのように進展するかを見るには、もう少し時間がかかるでしょう。ロレックスはグッチ、ルイ・ヴィトン、ポルシェなどのアイコニックなブランドの一つです。彼らは皆、自分たちのブランド、製品、イメージを保護するために積極的に行動する必要があります。したがって、それを制御すると呼ぶよりも保護すると呼ぶ方が適切でしょう。ほとんどの顧客は、自分の中古時計を最高の価値で安全かつ便利な場所で販売したいと考えていますので、競争は良いことです。」

まだ判断するには早いが、概ね賛成しているようです。


Watchbox 会長:Danny Govberg

「私はロレックスを讃え、CPOを完全に支持します。リーダーシップを示すだけでなく、ロレックスは持続的な品質と本物を求め続ける顧客に対する取り組みを示しておると思います。卓越した品質を求める顧客に対し、ロレックスはサービスを提供する最適な立場にいます。
私は40年以上にわたって中古市場に関わってきました。高級時計の価値が長期にわたって続くことを示すことが、新しい時計市場を支えています。常々、中古の時計を購入する際にも、新しい時計を購入する際と同じ透明性と品質を顧客が受けるべきだと言ってきました。ロレックスがこれを認識し、大胆で革新的な取り組みを行い、顧客の欲求とニーズを支援することを認めたことに、称賛を送りたいと思います。」

ロレックスを完全に支持している Govberg氏。そんな彼は “Govberg Jewelers” というロレックスの正規代理店としての顔も持っているので、この意見には納得です。


Loupe This ディーラー・創業者:Erik Ku

「ロレックスにとって二次市場における信頼を確立するための良い方法ですが、実際に何かが変わるかどうかは疑問です。二次市場の価格は非常に競争力があります。ロレックスの正規ディーラーが時計を下取り/買取りし、ロレックスのサービスでメンテナンスを受け、それを以て店舗で再販するという工程は、既存の二次流通市場を追い抜く競争力を持っているとは考えにくいように思われます。
しかしながら、価格にそれほどこだわらない購買層は、今までなかったロレックス正規店からの中古品を、安心して購入できるようになります。また、新品在庫が少ない店舗の場合、少なくとも『何かを販売する』ということができるようになりますが、その場合は価格がネックとなります。ブヘラはすでにウェブサイト上で販売価格を示しており、GMTマスター バットマンの中古品を2万1,000スイスフラン(約315万円)で販売していますが、新品価格の倍近い中古価格を、どのようにして顧客に対して説得するかは、わかりません。」

こちらはロレックスのCPOに対しては、先行きは不透明という回答です。良い面・悪い面どちらに傾くかを考えると、少し懐疑的な雰囲気を出してます。


Craft & Tailored 創業者:Cameron Barr

「私はヴィンテージウォッチやレアなモデルに関しての知識はありますが、一般的なラグジュアリーウォッチには詳しくありません。なので私はこのプログラムが、2000年以降の “モダン” なロレックスの購買層には大きな影響を与えると考えていますが、ヴィンテージやコレクターアイテムの市場には影響を与えないと思います。それでも、モダンな市場にとっては良い影響を与え、ロレックスが二次市場において価格の主導権を握る立場になることでしょう。また、多くの自動車メーカーが数年間にわたって成功を収めてきたCPOと同様に、一定の消費者層がロレックスのCPOに大きな価値と信頼を置くことでしょう。私が推測するには、ロレックスのCPOで取り扱われる個体のほとんどが、ロレックス正規店が過去20年近くにわたって販売した顧客からのものになるでしょう。中古車市場と同じようなイメージを持ってます。
これまでロレックスの正規店が中古の時計を提供できなかったのは、彼らの最大の競合相手である中古ロレックス市場が存在するためですが、このプログラムにより、ロレックスは従来知り得ることがなかった中古市場の収益や利益を把握する術を持つことになりました。そして店舗によっては本来、入荷することのないモデルを二次流通というシステムで提供できるようになるかも知れません
私は、ロレックスが現行の生産品と競合しないモデルを提供するための販売戦略もあると考えています。また、中古市場における現代のロレックスの価格は確かに下がってきており、実際に私の地元のロレックス正規店では、これまで入手できなかったモデルを数点ほど提案されました。
私はブヘラの出しているCPO価格、定価、Chrono24などの二次流通価格を比べてみました。比較対象として見たのは、GMTマスターII “バットマン” Ref.116710BLNRで、ロレックスCPO価格は約315万円に設定されています。現在の最新のRef.126710BLNRの正規店の新品価格は約127万円であり、Chrono24などのソースや中古ディーラーネットワークを通じてのRef.116710BLNRの中古価格は平均して約225万円、CPOが最も高い価格設定となっており、これは大変興味深い価格設定です。」

こちらの意見としては、”様子見” といったところでしょうか。自分たちの専門分野がヴィンテージモデルやレアモデルという専門的な分野がメインとなっているので、俯瞰して見ていくという立場なのかも知れませんね。


Chrono24 共同経営者:Tim Stracke, Karlsruhe

「今回のCPOの発表が、初めて時計を買う人たちが、ファーストロレックスを手に入れようとする意欲をより高めることになると信じています。すでに我々のデータでは、18歳から34歳のユーザーの購入リクエストの44%以上がロレックスを占めています。この発表が、当社のプラットフォームにおけるロレックスへの需要に火を付けるだけでなく、スイスの高級ブランド全体がどのように反応するかを見るのがとても楽しみです」

今や世界最大の高級時計におけるセカンドマーケットプラットフォームとなっているクロノ24。CPOプログラムが購入を希望している人達に対してより一層意欲を掻き立てる起爆剤となり、自分たちもそれにより恩恵を受けると確信しているのでしょう。そんな自信が見え隠れしています。


今回は、高級時計二次市場で有名どころの反応ということで見ていきました。結局のところ、「ロレックスのCPOは、やられたら困るなぁ・・・」というところは一つもなく、逆に好意的な反応がほとんどだと思います。ロレックスを資産性の高さで見ている人は、その性質上、価格重視という人が多いと思われます。そこで現在の中古市場の多くは、ロレックスCPOプログラムとの差別化を鮮明に打ち出し、正規の証明書がなくても、信用面での向上をいかに顧客から得られるかが、これからの課題なのかも知れません。