【殺人事件】ロレックスは語る
久しぶりの投稿となるヤマダです。新型コロナウイルスではありませんが、持病の悪化で少し病院に収監されていました。
今回は、時計の役割とは、時刻を知らせることだけだと思われがち。しかしそれ以上の役割を果たす時がある、というお話です。
1990年、カナダで金融コンサルタント業に従事していたアルバート・ウォーカーは、70を超えるクライアントから当時の価値としては約5億円もの詐欺を働いた。数多くの詐欺、窃盗、マネーロンダリングで起訴されたウォーカーは、3人の娘のうち次女(当時15歳)だけを連れて英国へ逃亡、名前をデイビッド・デービスと名乗り娘を “妻” と偽装して生活し始めた。
※アルバート・ウォーカー
ウォーカーはここでカナダ人のロナルド・プラットというテレビの修理をしている人物と意気投合、ビジネスを始めることとなる。しかし1992年、プラットはカナダへの帰国を希望する。ここでウォーカーは、カルガリー行きの片道航空券を購入し、帰国を後押しした。
これには理由が。帰国に協力的なウォーカーは仕事のために、運転免許証、出生証明書、そして署名用のスタンプを置いていくように話を持っていく。金銭的にも協力してくれるウォーカーに対し、プラットは応じた。
プラットに成りすますことができるウォーカーは、仕事に犯罪に手に入れたIDを駆使した。犯罪ではあるが、詐欺程度の犯罪で終わるはずだった。
しかし1995年、カナダに行ったプラットがお金に困り、イギリスへ舞い戻ってくることとなった。ウォーカーにとってプラットが英国に来ることは許されない。
※ロバート・プラット
そして、プラットの殺害計画を企てる。
再び英国で顔を合わせた二人。1996年7月20日、ウォーカーがプラットを自分のボートで釣りに行こうと誘い殺害した。プラットの遺体はイカリを付けて海に沈めた。
2週間後、プラットの遺体はイギリス海峡の漁師に発見される。漁に使う網にかかったのだ。しかし腐敗が進み、誰の遺体かは識別不明かと思われた。
ところが、プラットが身に付けていた時計がロレックスだった。全く水中でもダメージを受けていない状態のロレックスを重要な証拠品として手に入れた警察はロレックスのサービス記録を辿り、持ち主であるプラットを突き止めた。そして発見された時に止まっていた時間をパワーリザーブ48時間から逆算して死亡推定時刻も突き止めた。
1997年10月31日、イギリス警察はウォーカーを逮捕した。1998年に裁判が開かれ、有罪が確定。終身刑が言い渡された。
2005年にはカナダへ移送され、カナダでも詐欺罪などで追加裁判を受け、有罪となる。そして現在も服役している。
この事件は英国・カナダ両国内だけではなく世界中で注目され、ロレックスの信頼性を大きく高めた事件でもあった。
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