ロレックス デイトナの歴史【成熟期編】

はじめに

時代が求めているスペックではなかった。手巻きデイトナを製造していた時期は、時計界ではクオーツが業界を席捲していた。電池が続く限り数か月も動き続け、誤差も少ない。手巻き時計の需要は衰退の一途を辿っていた。ロレックスは、自動巻きのクロノグラフを模索していたが、妥協を許さないロレックスは、可能性を他社製のムーブメントへ求めた。その決断が、また新たな扉を開いた。

《成熟期》

Ref.16520

1988年、ロレックスは念願の自動巻きムーブメントのクロノグラフ、Ref.16520を発表した。説明するまでもないが、搭載されたムーブメントは「ゼニス社」”エル・プリメロ”である。少しの妥協も許さないロレックスは、高い品質のモノしか認めない。そんなハードルをクリアして採用されたムーブメントは、人気モデルの地位を確固たるものとした。

Ref.16520 黒文字盤のサブダイヤルが焼けで変色しているのがレアポイントとなっている

脱進機は大きいものに変更され、可変慣性テンプ、天輪を制御するピン(マイクロステラナット)、ブレゲの巻き上げヒゲを使用したヒゲゼンマイによってより好ましく高級な構成になり、正確性が向上。テンプの振動数を36,000から28,800に減少させ、手入れの回数を軽減した。
日付機能の廃止し、元となったゼニスのムーブメントの50%を変更して生まれたこのムーブメントは新たに”キャリバー4030”と名付けられました。そしてこのムーブメントを用い、ロレックスはRef.16500シリーズの製造を開始する。この新たなクロノグラフはステンレススチールのRef.16520、ステンレススチールとゴールドの組み合わせのRef.16523、ゴールドのRef.16528の3つのバリエーションを展開した。この戦略は大きな成功を収める。生産終了した手巻きモデルも需要が高まり、そしてこのゼニス社の供給制限があるムーブメントの新型デイトナは製造数に限りがあり、ますます人気が上がることとなった。

 

Ref.16528_blue dial via Phillips.com

イエローゴールド×ブルーダイヤルのレアモデル”Ref.16528”。フィリップスのオークションでCHF552,500≒600万円で落札されている。

Ref.116520

2000年のバーゼルワールドでロレックスはとうとう自社製ムーブメントを搭載したクロノグラフ、”コスモグラフ デイトナ Ref.116520″を発表する。先代モデルの”Ref.16520″が作り上げた人気は衰えることなく、ますます人気に拍車がかかることとなった。
技術的な面では、5年に及ぶ開発の末に産まれたCal.4130は強健性、効率、正確さ、点検のしやすさの点で改善が施された”ザ・プロフェッショナル”ともいえるデザインのムーブメントです。それを可能にしたのはロレックスの高性能な動力伝達方式「垂直クラッチ」が結合された機構です。これまでのクロノグラフの欠点であった「テンプの振動数が減少や、正確性が低下」「歯車の不完全な噛み合いでクロノグラフ秒針が飛ぶ」などが改善された。
Cal.4130は垂直に接続したクラッチがクロノグラフ秒針の正確なスタートとストップを可能にした。スタート・ストップ・リセット時に起こる不必要な動きは発生しないようになりました。「垂直クラッチ」のおかげで時間計測の正確性に影響を及ぼすことなく連続使用することも可能とした。その他、パワーリザーブが54時間から72時間へとなり、使用されるパーツの20%減など、数多くのメリットをもった高性能ムーブメントでした。そして、コピーを作るのには大変難しいムーブメントとなりました。

Ref.116520

このRef.116520は、約16年間というロングセラーモデルとなった。そして、名実ともに「ロレックスの顔」となったモデルでもあります。その製造期間中に、様々なマイナーチェンジが行われました。他には、デビュー当初に使用されていた塗料の影響で、白い文字盤がクリーム色に経年劣化で変色するものもあります。そんな個体は、レア物として現在では高値で取引されています。

Ref.116520 クリームダイヤル

そしてステンレスモデルの他、コンビモデル・ホワイトゴールドやイエローゴールド製のモデルも数多くラインナップされるようになりました。

Ref.116500LN

2016年のバーゼルワールドで、新たなデイトナが発表されました。前2モデルで不動の人気を得たデイトナのデザインを一新し、手巻き時代の”ポール・ニューマン”を彷彿とさせる顔となった。

Ref.116500LN

ムーブメントに変更はないが、ベゼルがセラミック製のセラクロムベゼルとなり、よりスポーティな見た目になった。そして人気がますます加速し、現在では最も正規代理店で購入するのが難しいという、ある種の社会現象となっているモデルである。このモデルについては多くを語る必要はないだろう。現在の定価1,247,700円であるが、2倍の250万円ぐらいでの実勢価格となっている。その他ステンレスモデルの他、コンビモデルやゴールドのケースにラバーベルト仕様、プラチナモデルなど数多くのバリエーションを持つ、まさに ”King Of Chronograph” という地位を築き上げた。