GRAND SEIKO コンセプトムーブメント「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」

2020年は、グランドセイコーにとって重要な60周年という年であり、様々なモデルを発表しているということは、ご存知の方も多いかと思います。なぜグランドセイコー60周年に力を入れるかというと、今は空前の高級時計ブームということも理由の一つにあるかも知れませんが、”60” という数字を重要視しているからだということです。

時間は60秒で1分、60分で1時間」と、時計にとっての “60” という数字は、特別なものなのです。グランドセイコー2020年を迎えてから、これでもかというぐらい60周年記念モデルを畳みかけています。そんな中、「9SA5」という新型ムーブメントを搭載した100本限定の60周年記念モデル、SLGH002を発表しました。

グランドセイコー60周年記念モデルSLGH002

素晴らしい画期的な新型ムーブメントを搭載しているのですが、このムーブメントは時計を製作するために開発されました。まぁ、時計メーカーとしては、当然の話です。時計を作ることを度外視して時計の中身(機械)をつくるなんて普通はしません普通は、です。

でもこのグランドセイコーはやっちゃったのです。そう、時計を作ることを考えずに、究極の精度を持った時計のメカを作るという、ある意味暴挙のような行動に。

それが今回ご紹介するこのムーブメント、機械式時計のコンセプトモデル「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン(T0)」です。

いやぁ、ほんと機械だけ・・・しかしこれの何が凄いかって、「コンスタントフォース」機構「トゥールビヨン」機構同軸に一体化した世界初の機構ということなんです。というより、トゥールビヨンは聞いたことある方も多いかと思いますが、コンスタントフォースって何ぞや?ということです。

コンスタントフォース・・・動力ぜんまいの巻き上げ量(ぜんまいのトルクの大小)にかかわらず、機械式時計の精度を司る「てんぷ」に、一定したエネルギーを届ける機構。

ということです。「コンスタントフォース=一定の力」と意味する通り、コンスタントフォースはガンギ車の各衝撃時のトルクを一定にする機構です。しかしこの機構を腕時計に採用している腕時計は少なく、採用している時計はかなりの高額となっている。

トゥールビヨン・・・「てんぷ」と周辺の部品を一定の速度で回転させることで、重力によって生じる精度誤差を取り消す機構。

ということです。これは高級ブランドハイエンドモデルに搭載されていることが多く、目にしている方も多いと思います。そうなんです、この2つの複雑機構を、同軸に一体化して組み合わせることで、機械式時計としてセイコーの歴史上で最高レベルの時間精度を実現したものとなりました。

これは、グランドセイコーとして初めてのトゥールビヨンということだが、それに加えてコンスタントフォースまで組み合わさっている。仮に商品化されれば、数千万円という価格となることは間違いなさそうです。

しかしセイコーという会社としては、トゥールビヨンを搭載したモデルを過去に発表しています。それがこちら。

このモデルは2016年に登場したクレドール・トゥールビヨン彫金限定モデル「FUGAKU」GBCC999 です。トゥールビヨンのみなならず、世界に誇る蒔絵作家(まきえさっか)や、セイコーを代表する職人たちが作り上げたモデルであり、5,500万円(税込み)というとんでもない価格でリリースされました。

しかしセイコーグループ全体を見渡しても、後にも先にもこのモデルのみしかトゥールビヨンを搭載しているモデルはない。確かに今の技術から考えると、機械式時計といえども精度に関してはトゥールビヨンのような複雑機構を使わなくても十分な時代。しかし時計作りに関わる職人達の技術を形にすることも大事。

今回のT0は、海外の雲上ブランドにも勝るとも劣らない技術を日本の職人が持っているということを証明してみせたのではないだろうか。そう、グランドセイコー日本の雲上なのだ。

T0を構成する部品たちは、美しく磨き上げられている。

また、T0はその刻音に大きな特徴がある。2万8800振動/時の振動数を持つ時計は、脱進機が1秒間に8回チクタクという音を鳴らす。T0では、ここにコンスタントフォースが発する衝撃音が1秒周期で加わるため、まるで音楽の16ビートのような刻音を発するのだ。しかしながら、コンスタントフォースがぜんまいのトルクを開放するタイミングを正確に1秒周期にするためには、非常に高度な加工精度が求められる。T0コンスタントフォースは、1000分の数ミリ単位で加工されたセラミックス製のストップ車に加えて、その作動のタイミングを微調整する機構をも備えることで、完全な16ビートの刻音を実現しているのである。

このT0ですが、実際に見れるところがここ、2020年7月20日岩手県雫石町 盛岡セイコー工業 雫石高級時計工房内に、グランドセイコーの機械式時計を製造する新施設「グランドセイコースタジオ 雫石」がオープン。

新型コロナウイスルの影響で一般の見学が見合わされるということだが、予約さえすれば一般見学もできるように近々なるでしょう。